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 ▼ ダーレン・アロノフスキー監督『π』  (98 米)

 映画に何を求めるかでひどく評価がちがってくる典型みたいな。んじゃ、ボクが何を求めてるかといって別にこれだというものがあるわけじゃないんだけど、変なものみたいってことでしょうか。そういう意味でこの『π』は満足させてくれるわけ。
 ストーリーなんて追い求めたってごくつまらん映画で、6歳の時に母親から太陽を見たらいけないと言われていたのに、太陽を見てしまった。そのためにいわゆるひきこもってしまって数学にはまりこんでいった主人公のマックスが、万物は数で表されるという妄想に陥る。そのせいでいわゆるまきこまれ劇となっていく。ね、ストーリー的にはつまらんでしょ。おまけに、黄金分割だとか、フィボナッチ数列だとか、ユークリッドであるとか、数学に興味なかったらほんとおもろくないでしょ。反対に数学バリ知ってたら、何、当たり前のこと言うとんのじゃあ!となるんだろうけれど、ボク程度ならちょうどおもろいんだよね。
 でもね、アパートの、あの何というの、誰が来たか覗く小さな丸い穴、そこからの眺めであるとか、ドアに偏執狂的に取り付けられた鍵であるとか、チェーンなんて2本もついてんだぞ、そういうとこがすごいおもろいんだけど。おもしろくないかなぁ。それとか、ICのチップに巣くう蟻が妙にリアルだったり、なんじゃかわからんチップについたゲル状のものを顕微鏡でのぞいたら渦巻いていて、これなんか思わず非線形物理の話を思いだしてしまった。そんなふうに小道具がなにげにおもろいんだけどね。
 それと、このひどくざらついたモノクロの映像というのはすごく好きだな。フォトショップで《2階調化》というのがあるやん。決めた明度より明るい部分は白にして、暗いところは黒にするという操作。そんな2階調とまでは行かなくても、かなりコントラストのきついモノクロで、マックスの偏頭痛を疑似体験させてくれる。確かに観たあとは頭が痛かった。観たからというわけでもないんだけどね。で、究極のモノクロは囲碁だね。蟻といい、とにかくざらついたモノクロを撮るために撮った映画だなと思う。
 あ、それから98年頃ってドラムン全盛の頃でしょ。ン〜、Squarepusherの"Burning'n' Tree"のジャケット思いだしてしまった。ドラムンを映像にしたら、って感じかも。Clint Mansellがテーマで、ほかにRoni Size, Massive Attackなどおいしいところバッチリ!
CinemaScape ★★★★☆


2001年10月02日(火)
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