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 ▼ 寺山修司 『上海異人娼館』 (81 東宝東和・仏)

 この『上海異人娼館』だけ、寺山=天井桟敷からぽっこり遊離したもののように思えて仕方ないのはボクだけだろか。寺山というキーワードで見たときに、はっきり言っておもしろくない。うがった見方に、80年前後の吉田日出子の大当り『上海バンスキング』に刺激されてか、『上海』を冠すればなんとかなると.... これは考えすぎかい? 実際、上海でありながら香港だったりして、上海である必要なんか、どこにあったんかと思ってしまう。
 カンヌを騒がせ、フランスで大ヒットと言われたところで、ボクには所詮、ヨーロッパの《オリエント=神秘》という彼らの思い込みにうまく乗っただけじゃないのかと思う。
 妙に見え透いてて、ざわざわしたもの、まがまがしさというものがないんね。細部的に、新高けい子をして劇中劇(ちなみに相手は藤田敏八ですね)を織込んでいくあたりは見せ所だろうけれど、天井桟敷のもつその猥雑感が変にさらっとしてしまっててどうも煮え切らない。「尻をもっと高く上げな!」と言われて、尻を突き上げているにもかかわらず、ご主人様は他のことに気を取られている。射精どころか、いじりはすれど勃起せず。それが奴隷をいたぶる極致さと言われればそれまでかもしれないけれど、そんな意図すらさらさら見えず。ご主人様はいったい何に夢中だったのでしょうね。ラストの異人娼館さえ幻でしかないというどんでん返しさえもくすぶったまま鮮やかな切れ味というものが感じられず。
 合田佐和子の壁やらに描かれた絵を楽しんで、小松方正、殿山泰司、藤田敏八を偲んで、をっと、寺山修司を偲ばずにどうすんだ、ってところでしょうか。
 あ、あと山口小夜子、いいねぇ。むちゃ好き。
★★☆


2001年10月21日(日)
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