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 ▼ ジュゼッペ・トルナトーレ『海の上のピアニスト』 (98 伊)


 ヘソ曲がり。。。あ、1900(ティム・ロス)じゃなくて、ボクがね。
 おもしろいんだよ、美しいんだよ、ぐさっと来るんだよ、でもなんだかすっきりしない。どうして陸の世界が無限なんだろ。どうして「アメリカ!」としか叫ばないんだろ。アメリカ=世界と限定したときに妙に抹香臭いというか説教めいた話になってしまってる。
 「鍵盤が無限にあるピアノでは弾けない」などと、妙に現実を匂わせるから、「憶病者の屁理屈」だなどととんでもないところに矮小化されてしまうんだよな。爆破なんて安易な手段で二者択一を迫るから矮小化されてしまうんだよな。思うに、みんな二者択一がお好きだねぇ。こうでなくても存在できるという選択がないのがイヤになる。あ、でもちゃんとこの映画じゃそうでなくても存在できるといことだけは仄めかしはしてるのにねぇ。でも二者択一が表面に立ちすぎてしまったなというのが、たぶんすっきりしない理由。
 簡単な話、ニューヨークとジェノバ?(と、言うてたと思うんだけど)の航路でしょ。ニューヨークにしか、こちらの世界は存在しないのだろうかと。ヨーロッパで陸に上がっても(船を下りても)いいじゃないの。アメリカったって海を見ることがなかったという人間さえいる、と、ちゃんとこの映画で語られているというのに、どういうわけか、ニューヨークに収束させてしまって、二者択一原理に終わってしまうところがなぁ。そうでなかったらお話にならないんでしょうかねぇ。トランペッタ−=マックス(ブルート・テイラー・ビンス)の回想を中古楽器屋のオヤジに語って聞かせるという構成なんだけど、そのマックスによって創られた話だと考えてみたら・・・そうだとしてもやっぱり二者択一か。
 すっきりしないという文句はおいといて、文句たらたらと書いたのには、それなりに楽しめるし、いい映画だなと思ったから。当時の豪華客船を描いてもかの『タイタニック』とは雲泥の差。揺れる(ううっ、考えただけで船酔いしそう)船の中で走り回るピアノのシーンは文句なしにいいでしょ。ジェリー・モートン(クラレンス・ウィリアムズ3世)とのバトルなんか思わず息詰めてしまうくらい。こいつの大ボラやらせたらブラックだな。それから、眉毛ピクピクバンドマンだとか、鬘つるっぱげ婆さんだとか。ピアノの縁に煙草を置いて演奏するなんて今じゃ考えられんだろうけど。
 エンニォ・モリコーネってどうも『夕陽のガンマン』の印象が強すぎんだけど、この映画では彼の音楽は外せない。「若い男に夫を殺させた」とか、「あいつの衣装は借り物だ」とか、そう語りながらピアノを弾いていく、音のはまり具合など、さすが、って、そればっかり作ってるから当たり前と言えば当たり前なんだけど。
 だからもうひとつひねり効いてたらなと思えるいい映画なのであった。

CinemaScape  ★★★☆  



2001年12月01日(土)
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