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 ▼ フリドリック・トール・フリドリクソン『コールド・フィーバー』 (94 アイスランド)



 単純におもしろいです。永瀬青年がアイスランドで死んだ両親の霊を弔いに出かける話。だが、厳冬のアイスランドにあの格好でよく行くよな、ったく。
 出てくるの、出てくるの、怪しげな連中ばかり、が、しかしそれがまともなわけだから異様にシリアス。以下、ネタバレ列挙
1 訳がわからず乗せられたバスは温泉巡りのツアーのバスだったり、このバスのガイドが妙に明るくて変。
2 タクシーに乗ると、途中でタクシーの運転手は、ちょっと用をしてきていいかと、ほっぽりだして、何やらわけのわからない宗教の集会をやっている。
3 やっと拾ってもらったトラックの荷台には10数人の男が立っていて、寒風の中走る荷台で歌い続けている。
4 「霊的な絆」で結ばれているのだと、凍てついた車を売りつけに来る女。どういうわけだか、その女のTシャツには霊的とはほど遠く「PIZZA」と描かれてある。
5 命からがらたどり着いた家で、やっと食事にありつくと、わけのわからない肉のかたまり「みんなは頬肉がいいというけれど、わたしは眼球がいいね。プロテインが多い。」と見ると、オヤジのむさぼりついている肉からゼラチン状の糸を引いている。
6 葬式の写真を集めているという女は他人の葬式の真ん中に永瀬正敏を立たせて写す。
7 壊れてかかりぱなしのカーラジオからはアイスランドの音楽ばかり流れ神経を苛立たせる。
8 誰も通りもしないような道で車が故障(なんでそんなとこをわざわざ走っていたのか不明)。厳寒の中での車中泊。次の朝、目覚めるとブリキの太鼓バリの少女が叫ぶと、氷河は崩れ、故障した車は息を吹き返す。
9 拾ってやったヒッチハイカーは音楽がうるさいだの、ションベンしたいだの、腹へッタだのうるさい。揚げ句に入ったドライブインで強盗殺人までやらかして、最後には永瀬正敏の車まで強奪。
10 行き着いたところが、カウボーイ本部のホテル。どいうわけだか極北のカウボーイの祭典があって、どこから湧き出たのか、カウボーイ姿の人間が集まってくる。
 と、こんなふうにむちゃくちゃなのだわ。真冬の恐山を何倍にも拡大したような、それくらいではすまないな。アイスランドという島全体が恐山のような。
 とにかくそのカウボーイホテルで、「黒い死」と言うアイスランドの地酒を飲まされて、へべれけになったところで、やっとアイスランドの爺ちゃんに巡りあって、目的の地まで爺ちゃんと二人で行けるわけだが、そのころには青っちろい永瀬青年は羊の肉にかじりつく男・永島になってたといました。
 えっと、話はほとんどアイスランドなので、永瀬青年はずっと英語でしゃべっている。さもなくば、無言。その中で、ふっと口を突いて出る日本語「腹へッタなぁ」「寒すぎるぅ〜!」がとてもリアル、わかる、わかる、そういうときはつい日本語になってしまうもの。もう1ヶ所、二日酔いで寝ているところにかかってきた電話に「もしも・・・ヘロぉー」はリアルすぎ。
 ちなみに、始まりは舞台は東京です。外人が撮った日本映画ってのも見モノです。をっと、永瀬青年の爺ちゃんは鈴木清順翁なのだった。
 見るのだったら真夏に見ましょうね。




2001年12月04日(火)
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