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 ▼ アンソニー・アスキス『予期せぬ出来事』 (63 米)


 ハリウッド、といってもやっぱりこのころのハリウッドはさすがだなぁ。いまのハリウッドはもうほとんど観る気がしないけど、ほんとこのころのハリウッドはおもしろい! おもしろすぎる。
 いきなりオーソン・ウェルズだもん。なんだ、なんだ、コメディーかと思わせといて、しっかり人間ドラマに引っ張り込んでいくなんてのほんと最高よ。
 舞台がロンドンの霧に閉ざされた空港とホテルだけで描かれきってしまうのもなんとも言えずにいい。空港ロビーにしたってほとんどセットだろうし、大量のエキストラが、いかにも時代を感じさせてくれるし、何よりも映画というのはこういうふうに丁寧に作っていったんだなと思える。
 そしてやっぱり女優なんかなぁ、いまさら何を言わんかなのリズだもん、もう風格が違うってところ。すっかり周りを整えておいて、よっ!待ってました!とばかりに、リズとバートンがヘリコプターで現れる、なんて言うとど派手に思えるけれど、まぁ、ど派手じゃなくて颯爽と現れる、こういう主役の出てきかたというのいいなぁ。
 このエリザベス・テーラーとリチャード・バートンにルイ・ジュールダンがからんでの三角関係が、三つ巴演技というかバトルだな。そのどの組み合わせもinterestingなおもしろさ。このメインを軸に、マギー・スミス+ロッド・テイラー、オーソン・ウエルズ+エルザ・マルティネリの3組の男女の機微を描くいわゆるグランドホテル方式になっていて、このメインとサイドの力点の配分がすごくいい。いくらリチャード・バートンとリズの組み合わせでも、メインだけだとヘタすりゃタダのメロドラマになりかねないのとちがうかなぁ。そして忘れちゃいけない、でぶ婆ちゃん=マーガレット・ルザフォードがとぼけて味を出してむちゃいい。しかもきっちり締めるところを彼女に締めさせている。ちなみに、マーガレット・ルザフォードはこれでアカデミー主演女優賞を獲得してるのもうなずける。とにかくこれら俳優の演技力、話術で、ぐーっと引っ張って行ってる映画。またそういう引っ張り方で見せることができたんだから、いろんな意味で何やら羨ましい。
 それとミクロス・ローザの大時代的な音楽、これがまたいい。音楽の入り方なんかはさらに20年古いような気になってくる。良き時代のハリウッドで渋くきらっと光る佳作だね。




2001年12月15日(土)
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