nikki-site 雑文速報
 あいうえお順INDEX 



 ▼ イ・ジョンヒャン『美術館の隣の動物園』 (98 韓)


 ごくごくありふれたラブ・ストーリーで、ラストもごくごくごくありふれていて、さっぱり新鮮味などない。当たり前のように動物園と美術館に行き違いになって、当たり前のようにその分かれ道のところで再び出会ってしまってハッピーエンド。そのすれ違いなど完全に読めてしまう。すれ違いのまま終わってしまうという要素など全編通じて全く無いでしょ。こういうふうにハッピーエンドになりますよ、なりますよと示しておいて、きっちりハッピーエンドに終わってしまうところい全くと言っていいほど、おもしろみがない。
 が、しかし、おもしろいのだ! さんまと大竹しのぶの絶妙なテンポの『男女7人夏物語』の軽さがある。そして脚本自体は『夏7』よりずっと上を行く仕上がりだ。やっぱりテンポがいいのは見ていて楽しい。
 チョンヒ(シム・ウナ)のところにチョンル(イ・ソンジェ)がころがりこんでくる二人の突拍子もない出会いがいい。そのあと展開していく物語は現実には絶対にありえないこと、どう逆立ちしたってありえないことだけれど、そんなことなどきっちり吹っ飛ばしてくれる展開なのだ。
 そして、チョンヒが(を、変換してたら「貞姫」と出たぞ、うんうん、なるぅ〜)、書きかけているシナリオが二人の共同作業で、劇中劇的にもうひとつのラブストーリーが進んでいく。もうひとつのラブストーリーに出てくる男と女は、チョンヒとチョンルの意中の男と女であったりする。つまりシナリオにお互いに自分たちの恋愛の相手を投影させていくうちに、シナリオの中のチョンヒとチョンルに転化していくのだ。そのシナリオの中の人物を借りて、自分たちの恋愛観などを語らせたりして、この構造もすごくおもしろい。ただもうちょっと整理されてもいいように思うが。
 雨降りに二人で一本の傘をさして、そういや雨降り+傘のシーンが多いなぁ、スーパーに買物に行くのだけれど、その帰り道はもうすっかり雨はあがってしまっている。スーパーの荷物はもってやるから傘をさして乾せ、そうすれば家の中が濡れなくて汚れなくて済むだろうとチョンヒに傘をささせるというシーンがすごく好きなんだよね。そのずっとあとでもチョンヒが雨上がりに一人でいるときに傘をひろげるシーンがはいってくるのだけれど、そんなふうにとても繊細なセンスが光っている。そんなシーンの連続。
 とにかく細かいことは抜きにして、久しぶりに邪悪なこのボクを爽やかな気分にさせてくれた、そんな映画。

★★★★




2001年12月19日(水)
 ≪   NEW   INDEX   MAIL   HOME 


My追加