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 ▼ アラン・ルドルフ『モダーンズ』 (88 米)


 舞台は1920年代のパリ。いわゆるエコール・ド・パリと言われた古き良き時代。つまり見ていていちばん楽しくて、絵にするにも一番おいしいところ。
 実際、ヘミングウェイ(ケビン・J・オコナー)が実名でばっちり出てくる。パリのカフェで、モデルのような女が、『日はまた昇る』がどうったらこったら、「あら、それはフィッツジェラルドよ」なんてシーンには思わず笑えてしまった。舞台仕立てがそれだもんだから、をーをーと喜んで見てました。うーんと、あの時代のパリの女のファッションがとにかくいいのだな。
 が、ところが、なんだか安易すぎないか。それが、ヘミングウェイだったり、モジリアニだったり、いわゆるエコール・ド・パリ初級編ばっかし。キスリングありーの、藤田ありーの、ジョイスありーの、掘り起こせば、いくらでもいるだろうに、なんでもかんでもひっぱり出してきたらええってもんじゃないけれど、見かけばっかり20年代パリだけれど、いかにもって感じで安っぽくて、そっちのほうはすぐに飽きてしまった。その20年代パリの雰囲気は、そういう美術・装置、音楽というのじゃなくて、ハート (キース・キャラダイン)のアトリエの窓から向いの娼婦の部屋が丸見えで窓越しにヘミングウェイとしゃべったりするところ。をー、そうそう、カフェでジャズとかもやっちゃたりしてくれてんだけど、それなりにいいんだけど、やっぱりわざとらしい。わざとらしいといえば、章の区切りでモノトーンにフェードされて切り替わるというのも、をっと思えるのは初めの1,2章まで。全体的にわざとらしさが目についてしまう。

 それよりジョン・ローンの情けないのを見てるほうがずっとおもしろかった。いやぁ、ジョン・ローンって、嫌みな男やらせたらほんと天下一品だね。徹底的に情けなく傲慢で、これじゃ女も逃げ出して当たり前でしょってくらいに描かれている。揚げ句の果てには、レイチェル(リンダ・フィオレンティーノ)に振られて飛び込み自殺はやらかすされる始末。脇役としてピカピカ光ってる禿のオイゾー(ウォーレス・ショーン)が、自ら偽装死亡記事を出して葬式までやってのけるんだけれど、その棺桶にかわりにジョン・ローンがほりこまれ、最後には霊魂となって出ていくなんて遊びまくられている。ジョン・ローンのファンは絶対に認めたくない映画だろうなと思うけど、ボクにはピカ1に思えた。はい、実際、この映画のメインはキース・キャラダインだけど、彼なんてどうでもよろし。ボク的にはああいうタイプの二枚目男優というのはどうも好かん、おもろくないんだよ。メインはなんといってもジョン・ローンの情けなさですよ。これが最大の見モノ。ほんとすごくはまってんだから。
 ところでリンダ・フィオレンティーノはボクは好きよ、って、他に出てるの観てないけれど、だってボクの守備範囲外にしか出てないでしょ、あの声が好きだな。ちょいと低い目で、あの声で耳元で囁かれたら、ボクならころっと行ってしまいそう。

★★★  



2001年12月21日(金)
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