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 ▼ カルロス・サウラ『タンゴ』 (98 スペイン・アルゼンチン)


 文句なしに★5つつけてしまいます。話の筋立てが『カルメン』の二番煎じだとか言われるようが、ボク、見てないもーん、だから番茶も出花じゃないか、な、何だかようわからんけれど、二番煎じだろうが三番煎じだろうがとにかくいいのだ。文句あるか。観終わった後すぐ、タンゴのステップというか、足の出し入れだね、あれをちょっとやってみた。できるかっ!(^_^ゞ
 いや、冗談抜きに、これまでずっとタンゴというのをなめておったな。ビートがすごいのだ。そのタンゴのビートというのを知っただけでも、これはすごいよ。だいたい、タンゴなんてのは、おっさんとおばはんが澄ました顔してダンスホールでこれ見よがしに踊ってるときに鳴っている音楽だという偏見があったからね。だいたい、ボクは偏見ばっかりで物事を語っているぞ。あの日舞のお澄まし顔が生理的に受け付けないんだけど、日本でダンスしてるのってそのノリがあるんだよなぁ。 話を戻して
 セシリア・ナロバを最初に出してくるシーンから思いっきりかっこいい。こんだけ決め決めで出されたんじゃ、かなわないというもの。照明の使い方がとにかくすごいのだ。スペインならではの色の使い方なんだね。ラテンの情熱とでもいったらいいのだろうか、あれだけ燃えるようでいて、すきっとした色の使い方なんかちょっと真似できない。
 カルロス・サウラ監督自身がダンサーでしかも振付師だから踊りの見せ方というものを知りつくしている。ちょうど『ジェリコ・マゼッパ伝説』を撮ったパルタバスが曲馬団の団長で馬の美しさを描いたのと同じように、ダンスの美しさを描きつくしている、だからもうそれだけで圧倒されてしまうのだ。
 それだけでさえ圧倒されてしまうのに、このタンゴ・ダンスを使って、二重構造の三重構造の映画に仕立て上げてしまう凄さ。しかもフランコ政権への痛烈な批判(スペインでの対立の根の深さはボクらには想像しにくいことだけれど)を織り交ぜて行く。ラブロマンスにしたって、素の映画で表現したとき、とるにたりない陳腐なメロドラマになってしまうのに、タンゴ・ダンスという武器をもってすると、どれほどに官能的になることか。実際、濡れ場なんてものは1ヶ所もない。ただひとつキスシーンがあるが、そのキスの激しさはちょっとひるんでしまう。ミア・マエストロが口を大きく開けて舌が入ってくる。これはそこらのAVなんぞハダカで逃げ出すってもの。そんなキス・シーンであってもタンゴ・ダンスの表現には及ばないのだから。
 地のパートでも、きっちり言いたいことだけは言って、何だか中途半端だと思えるかもしれないけれど、ボクはあれで十分だと思ってる。その淡泊な演技のパートがあるからこそ、ミュージカルというにはもったいないダンスのパートの濃密さを引き立てていると思う。

 これって魔術だなぁ。それであのラストをもってくるんだもん。正直、降参です。

★★★★★  



2001年12月23日(日)
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