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 ▼ デレク・ジャーマン『カラバッジオ』 (86 英)


 とにかくこいつはまずカラバッジオの絵画を見てないとおもしろさ半減。
WebMuseumなどでまずチェック。
 正直、どきっとしてしまった。こういう美術系、そうした伝記的な映画はいろいろあって、そこには当然、現物のコピーなり、作成中の絵が出てくるのだけれど、デレク・ジャーマンはそれを直接モデルで、つまり俳優たちを使って実現してしまった。そこに表された光がまったくホンモノにそっくりなのだ。(ここでホンモノというのは、ボク自身はルーブルなどで見たことはあるかもしれないけど記憶になくて、恥ずかしながらWeb上でのデジタル化された画像でしかない)が、それでもインパクトはきつすぎる。バックのドレープにあたる光なんてほんとそっくり。いや、Webの画像以上に質感がある。なんせ光と影の使い方が抜群なのだ。そして天使の羽だとか、床に置かれたグラスだとか、カラバッジオの絵画の背景に現れるアイテムがたくさん出てきて、さすが映像作家とうならされっぱなし。これだけ作り込んでいる映画というのもちょっとないし、それらを見てるだけでも楽しくてしかたがない。
 実際のカラバッジオは、ボクそんなに勉強してるわけではないので逃げをうっておきますが、当時の画壇にあってかなりのアウトサイダーぶりを発揮してたらしく、たとえば聖母マリアのモデルに川に浮かんだ溺死体の女を使ったとか、そうして揚げ句の果てにテニスの試合のいざこざで殺人事件まで起こしたという、かなり血の気は多そうで、その後、ローマを追われてシシリーなどを転々としたらしい。映画ではその史実通りには描かれてなくて、確かにカラバッジオによる殺人は起こるのだけれど、テニスが原因というわけではない。ここはネタバラシしないで伏せておくけれど、それにからめて、The Death of the Virgin (下の画像)を使うあたりほんとニンマリさせられてしまいますです。
 デレク・ジャーマンはゲイ・カルチャーから絶賛を受けてるので有名なんだけれど、そこらあたりもうんうんという感じ。だけれど、ゲイ・カルチャーが前面に押しだされてるわけでもなくて、そうだからと身構えることもなくすんなり納得させらてしまうのも不思議。
 並の伝記モンの映画とは一味も二味も違う。とにかくもう最高ぉーっ!!

Caravaggio
監督 デレク・ジャーマン
脚本 デレク・ジャーマン
撮影 ガブリエル・ベリスタイン
出演 ナイジェル・テリー / ショーン・ビーン / デクスター・フレッチャー / スペンサー・リー / ティルダ・スウィントン / ロビー・コルトレーン / ナイジェル・ダベンポート
★★★★★


※ こうじて、03年の夏にはローマ、フィレンツェへカラバッジオの絵を見にいきましたやんか(^_^;
サン・ルイジ・ディ・フランチェージ聖堂の「聖マタイと天使」



2002年01月01日(火)
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