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 ▼ クシシュトフ・キェシロフスキ『トリコロール:青の愛 』(93 仏)


 どこからどう切りだしたらいいのか、これはほんとれびゅ書くのに困ってしまう。とにかくむちゃくちゃに好きな映画。『青』、『白』、『赤』の3部作でいうと、やっぱり間違いなく、青になってしまうのだった。だって一番わかりやすいでしょ。映像的にも色彩としてもっとも強調されているのが『青』でしょ。だからもっと渋く迫りたい人なら『白』というだろうけれど、ボクは単純に『青』。ジュリエット・ビノシュがどうこう以前に『青』

 まず青のモビール。これが青でなくてもいいようなものだけれど、あえて青にしましたか、なんていうのは無粋というもの。このモビールが赤だったらどうなんだろうとも考えてみるけれど、この話でやっぱり赤は似合わない。じゃ、白(透明になるんだろうけれど)だったら質感が出てこない。そうすると青なのだ。
 わざとらしいといえば青いキャンデー。そんな色のキャンデーなんてあるのか? その色はおいといて、そこでジュリエット・ビノシュのその棒付きキャンデーの食べ方に注目。がちがちがちと噛み砕くように食べてしまう。それが引鉄になってオリビエ(ブノワ・レジャン、亡くなった夫の友人)を呼びだして寝てしまう。このシーン、好きだぁあ〜。見えませんが(^_^;A 朝にオリビエに「汗もかけば咳もする。虫歯もあるわ」とことば ― このセリフにぞっこんなんだよなぁ ― を残してオリビエからも去っていく。壁にこぶしをすりつけて歩くビノシュ、左手には青のモビールを入れた箱を抱えて。これはキャンデーから一つながりの表現なんだよね。うん、わかる、わかる。どこかでそんなことを自分もやってしまったことがるような。
 そうして何からも解き放たれて自由(青)になったはずのビノシュがカフェで見るのは老婆。この婆ちゃん覚えとくように(含み笑)
 青の色ではさらにプールの水の青。何からも解き放たれたはずが、全くそうでなかったことを思い知らされるのがプールのシーン。ここでビノシュの凍りついてしまう表情は絶対青なんだと思う。ここの青い色はとてつもないんだから。
 ビノシュの心を表現していくとき、顔にちらちらと光が当てられる。これは『二人のベロニカ』などでも多用されていたことだけれど、同じスラボミール・イジャクのカメラということで納得させられる。ちょっとくどすぎるような気がしないでもないけれど、とにかく美しいことは美しい。すごく美しい。
 自由(青)であろうとすることは、何もかも消し去ることでなく、より内へ向かって初めて得られる。ビノシュがたどりついたところはそういうところだった。。。なんて、まとめにかかっていいのか<自分
 それでは(笑)、えーっと話がまったく後先してしまうんだけれど、冒頭の事故のシーンというのもいいね。すごく上手いと思う。無駄なくアイテムを配してるんだもん。それでミステリーっぽく仕立てておいて、一気にひっぱりこまれる。ビノシュが初めて現れるのはアレだもん。そこでもこのキェシロフスキとスラボミール・イジャクのコンビはやってくれてます。いきなりこれだもん。
 そしてやっぱり絶対はずせないのが音。もちろんあの交響曲はどんぴしゃはまってるよ。ビノシュの「そこは金管を抜いて」でするっと音が変わってみせたりするところや、指の先の動きで音が動いていくところなども圧巻。そしてあのプールでもね。それでもふっとさりげなくリコーダーを入れてくるところ。この音で、自由(青)であろうとすることが、外に向いていたのが内に向き始めるファンファーレだったとは。

Trois couleurs: Bleu

監督 クシシュトフ・キェシロフスキ
脚本 クシシュトフ・キェシロフスキ / クシシュトフ・ピェシェビッチ
撮影 スラボミール・イジャク
美術 クロード・ルノワール
音楽 ズビグニエフ・プレイスネル
出演 ジュリエット・ビノシュ / ブノワ・レジャン / フロランス・ペルネル
★★★★★




2002年01月07日(月)
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