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 ▼ パトリス・ルコント『サン・ピエールの生命(未亡人)』  (00 カナダ,仏)


 これ、確か1849年のことだとか出たと思うんだけど、1848年に本国フランスで二月革命が起こってるんです。これとて終わってから娘の世界史の教科書でお勉強したから言えるのであって、観てる最中は、なんか本国は共和制どうこうで荒れてるのだなとしかうかがいしれなかった。で、このサン・ピエールという島はフランス領で、ん?どこにあるんだぁ(-.-;)
 例えば、フランス人が、日本の時代劇(だって1848年というと幕末でしょ)をほとんど何の知識もなしに例えば『龍馬が行く』なんてのを観たらどうなんだろ。まだ坂本龍馬なんかだったらコアなところの話なのでわかるかもしれないけれど、その時期の佐渡島で起こった事件をとりあげられたら、かなりとまどうはず。
 いまもって、二月革命でどうなったんやら、ようわかってないし、サン・ピエール島がどこだか。。。。はい、調べてきました。
「カナダのモンレアル(モントリール)の北東1800kmのところ、テール・ヌーヴ(英語名はNewfoundland)州の沖合いにあるのだ。普通の地図では出ていないような小さな島々がサン・ピエール=ミクロン諸島」
http://www.st-pierre-et-miquelon.com/mique/IAM.html
 フランスではけっこう知られてるみたいね、日本人が佐渡島を知ってるように。

 つまりね、そういうことを知ってたら、もっとおもしろいんだろうけれど、そこんところでつまらなかったな。たしかにギロチンを死刑囚ニール(エミール・クストリッツァ)が自らすすみ出て運ぶなどという不条理は普遍性をもつだろう。だけれど、死刑囚を軍隊の隊長ジャン(ダニエル・オートゥイユ)が管理するというのは理解しがたいし、ましてや、その妻ポリーヌ(ジュリエット・ビノシュ)が死刑囚を牢から外に連れ歩くというのはまずもって奇異以外のなにものでもない。ましていくら自分の管理下にあるとはいえ、妻ポリーヌがニールに、想いをよせるということに対して、夫であるジャンはどういうつもりなんだ? 
 そんな状況把握がほとんどできない状態で、ジャンに、ポリーヌに思い入れなんてできるなんて、とうていボクはできなかった。
 そこはルコントのことだから、それぞれのシーンに意味を持たせているのだろうけれど、そんなのをつかみきれないままに二人の男は逝ってしまった。そしてビノシュが残された。という表面的に上滑りなままなんだね。時代的にも地理的にもかなり特殊で、それらに意味があるはずなんだけれど、ボクら日本人が日本史、日本地理を知ってるのと同程度に、フランス史、フランス地理を知っているフランス人相手に語りかけているようだしか考えようがない。
 ピーター・コズミンスキーの『嵐が丘』でもそうだったけれど、こういうヨーロッパ時代劇でのビノシュはそつがなさすぎて楽しめない。
 ラスト近くでの解き放たれた馬のシーンだってわかるんだけれど、ルコントだと思うと、いまいちキレがない。。。。島に連れてこられた馬が島からは抜け出せないのと同じように、法・秩序の下から抜け出せないのが憐れに思えてしまった。

La Veuve de Saint-Pierre

監督 パトリス・ルコント
撮影 エドゥアルド・セラ
出演 ジュリエット・ビノシュ / ダニエル・オートゥイユ / エミール・クストリッツァ
★★★




2002年01月11日(金)
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