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 ▼ ギャスパー・ノエ 『カノン』 (98 仏)

 『カルネ』と来たら、『カノン』なわけで、『カルネ』の全くの続編『カノン』を一気に行ってしまいます。
 『カルネ』が耐えられなくても、『カノン』のほうはなんとかなるとは思うんだけど。とりあえずは、『カルネ』観てからのほうがいいか。別に『カルネ』なしでも、『カノン』を観てもわけわかるとは思う。スライドショーっぽく、『カルネ』の復習してくれてるし。
 しかし、この『カノン』も血が噴き出るシーンがあるので要注意! 今度は、馬じゃなしに人間の首からどっくんどっくん。これってどっちが怖いんだろ。ボクは馬からのほうが怖いと思うけど。だって人間だからウソっこに決まってるでしょ。しかしこの血が噴き出るの、ひどくリアルよ。ほんとに血が噴き出てるのなんて見たことないけど、そこらのスプラッター映画と比較にならないくらい怖い。
 それはそれとして、『カルネ』の救いようの無さが加速度的に進行して行くのが『カノン』。ふーっ、ややこし。あ、原題は『Seul contre tous(全体か孤か?)』で『カノン』じゃないです。でもこの勝手につけた邦題『カノン』はなるほどと思わせるものがあって、ん〜、そのカノンが必要なのか、不要なのか、これは議論が分かれるところだけれど、ボクは素直にカノンでよかったと思ってる。いくら映画の中だと言ってもね。でも現実に、カノンさえない、なんてことがままあることを心してかからないととも思うけれど。
 とにかくその救いようの無さというのは加速度的に進行するというのもごく当たり前のことで、父娘二人で出口が見えない地下道を歩いているのが印象的。『カルネ』のラストがクルマでトンネルをくぐって行くというところだったけれど、トンネルや地下道というアイテムが効果的なんだよなぁ。
 加速度的に落ちていく仕掛けのひとつがオヤジのポケットの中。執拗にあと何フランと勘定するでしょ。映画の技法としては前作『カルネ』とさほど変わらない。スピーディーなカット割りにぐいぐい落込まされていく。オヤジのブツブツにもますます拍車がかかって、これなんか、まんまゴダールなんだけど、だーっと流れる字幕に引っ掛かったらダメよ、音なのです、音。もうほとんど効果音というたらいいのか、これが加速度に落下していく音が唸っている。 不快といえば、オヤジのブツブツに匹敵する不快音、眠くなりかけても起こしてくれるバチューンという音。落下のカウントダウンともいえる。これもかなりしつこく繰り返される。さらには、ブレヒトっぽいテキスト画面、これも映画の中ではそう見受けられるものじゃないので、うざく感じる人も多いかもしれない。それが何度もはさまれる。とにかく不快であればあるほどいいのだ。どういいんだか(笑)
 そして、最後にバンっ!ドクドクの止めの一発。もう立ち直れないところまで、父娘ともども観てるほうも突き落とされて、・・・・・そしてカノン。どっとカノンが押しよせてくる仕掛け。とにかくカノン目指して、逆向きのベクトルを何重にも積み重ねられている。へこたれないように(笑)

 ラストの何でもないパリ郊外?の情景、好きだぁ。

Seul contre tous
監督・脚本 ギャスパー・ノエ
撮影 ドミニク・コリン
主演 フィリップ・ナオン / ブランディーヌ・ルノワール
★★★★★




2002年01月13日(日)
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