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 ▼ 増村保造『刺青』 (66 日)

 もうもう若尾文子の背中にベタ惚れ。いやそれ以前にこのころの、とくにこの『刺青』での若尾文子はとびっきりに美しい。本当にため息が出るくらいに美しい。そのものすごい美人の背中。透けるような背中。ボクが仮に彫り師だったらぜったいに彫ってみたくなる。66年という時代の若尾文子がいたからこそ撮れた映画といってもいい。実際に増村保造は若尾文子に惚れてんだよなぁ。
 実はこの66年当時というのはボクはまだ中坊で、『卍』とかの映画のポスターを指をくわえてみておったよ。それから30数年経ってもやっぱり若尾文子の背中はもうほんとに最高だ! こんなどきっとする背中というのも見れたものじゃない。はっきり言ってオカズにしてしまえる。今晩のオカズにしてしもたろかしらん。やぁ、まだ興奮してんだから。あ、もう正直に白状しておきます。勃ちました。鬼六先生のイメージの中にあったのも若尾文子じゃなかったかしら。
 そして若尾文子の背中に女郎蜘蛛が彫り込まれたときの背中は凄すぎる。
「重く引き入れては、重く引き出す肩息に、蜘蛛の肢は生けるが如く蠕動した。」
 背中の演技とはこういうのを指すんだろう。本当に「生けるが如く蠕動」させる若尾文子は凄い。あのように背中を動かすことできるものなのか。このシーンを撮るだけにどれだけの時間をかけたものか。
 でね、原作とね、どうしても比較してしまうんだけれど、観ていて、あら、こんなのだったかと思って、大慌てで読み返したよ。10ページほどだから。そうなんだ、これが谷崎先生のデビュー作だったんだ。原作では彫り師と女に終始している。
 余談だけれど、当時大映の社長永田雅一は『刺青』(しせい)などで客が入るものかと、『刺青(いれずみ)』とさせたという。借りてきたビデオのパッケージにもしっかりと「(いれずみ)」と記されている。客が入らなければどうしようもない。だからというわけでもないのだけれど、谷崎の原作に拘泥することなく、
「女は剣のような瞳を輝かした。その耳には凱歌の声がひびいていた。」
を、さらに突き進んで、自分を陥れた男たちを次々に「こやし」にしていく。ここでもたっぷりと若尾文子の背中が披露されることになる。若尾文子自身のことばを借りると
「本当に自分勝手でわがままし放題の役柄で、ああいう人物を絢爛と描くのは映画として気持ちいいじゃないですか。」
 いきおい、若尾文子の美しさに圧倒されてしまうけれど、例えば雪の中を長谷川明男と駆け落ちするシーンもすごくいい。はっきりとセットだとわかるのだけれど、ところが逆手にここは思いきり芝居がかって見える。芝居の場面をそのまま映画の中に引っ張ってきたようなシーン。降りしきる雪と、その向こうの書割りのコントラスト。これは忘れられないシーン。それから一種幻想的といえる林の中。血なまぐさいシーンであるにもかかわらず、ソフトフォーカスに浮かぶきりっとした若尾文子はやっぱり美しい。


監督 増村保造
脚本 新藤兼人
撮影 宮川一夫
出演 若尾文子 / 長谷川明男 / 山本学 / 佐藤慶 / 須賀不二男 / 内田朝雄
★★★★★



2002年01月24日(木)
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