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 ▼ アレックス・デ・ラ・イグレシア『どつかれてアンダルシア(仮)』 (99 スペイン)



 『どつかれてアンダルシア(仮)』という邦題がいいねぇ。語呂がとっても素敵。『Muertos de risa』という原題、もちろんスペイン語だけど、わかっとりません。そのうちまた誰かが教えてくれるだろうけど、どこにもアンダルシアなんてありゃせんし、一瞬たりともアンダルシアの風景なんてものは出てこない。出てくるのは凄絶なる憎悪の闘い。なんていうとまたまたくらぁ〜い話..というわけでもなくて。よくぞこのような企みが思いつけるのだと、さすがスペインであります。
 とりあえずはどつき漫才ですね。どつかれるとか、人がはめられて困っているのを傍観することで喜ぶという下品な根性、これは洋の東西を問わないわけですね。それでだいたい世の常としてボケとツッコミのどちらの人気が出るかというと、ボケの方であってツッコミは添え物的でしかない。ボケがいないとツッコミはなんら魅力がないけれど、ボケの方はツッコミがいなくても、誰であってもツッコミができる。
 ここでボケはニノ(サンティアゴ・セグーラ)、これはどう見ても主役を張れるような風采でなくて、ダサい、さえないのような典型。一方、ツッコミのブルーノ(エル・グラン・ワイオミング)のほうは少なくともニノよりはマシってだけ。顔はジャン・ポール・ベルモンドを石臼で轢いたような。そのさえない二人がコンビを組んで売り出そうとしても、当然のことながら売れるわけない。ところがひょんなことからニノの横っ面をビンタ喰らわしたことがバカ受けして。。。
 映画が面白くなる、あるいはこの映画の見せ場はここから。これも世の常というわけか、こういうコンビの場合、私生活はひじょーーに仲が悪い。険悪ともいえるくらいに仲が悪い。なんでわいばっかりどつかれて人に笑いものにされんなあかんのだ。逆になんであいつばかりが受けて、所詮オレはあいつの引き立て役にしかすぎないのじゃないか。と、いうわけで、憎悪の闘いが始まる。
 このアレックス・デ・ラ・イグレシアという監督はスペイン映画界の問題児らしく、この狂気に至る憎悪の闘いは凄まじいのひとこと。隣り合わせの家に住み、互いに監視するわ、パーティーやってると見せかけてドンチャン騒ぎを流してはノイローゼ状態にするわ、ニノのバッグをコカイン入りのバッグとすり替えて刑務所送りにしてしまうわ、それでもそれが陰湿にならないのがスペイン的。欲を言えば、ニノのパーティーでもっともっとむちゃくちゃやらかしてほしい。女の一人や二人、素っ裸で走り回らすとか。。。これに二人のマネージャー、フリアン(アレックス・アングロ)が絡んで、こいつも相当に怪しい。言うなれば狂言回し。
 このドタバタにスペインのフランコやら1981年のクーデターやら92年のバルセロナ・オリンピックを挿んでくるのは、多分にイグレシア監督の映画界の問題児と言われる所以なんだろう。ここらあたりはスペインの政治事情などに詳しくないとわかりにくい。きっと茶化してるんだろうな。ボクら日本人が知ってる以上にスペインはごたごたしてたようだし。戦車が走る前を、この二人じゃない誰か二人が駆け抜けていくシーンがあるんだけど、これってどっかで見たことあるような。
 スペインという風土はドンキホーテの昔からどうも一筋縄でいかない。

Muertos de risa
監督 アレックス・デ・ラ・イグレシア
脚本 アレックス・デ・ラ・イグレシア, ホルヘ・ゲリカエチェバリア
出演 サンティアゴ・セグーラ, エル・グラン・ワイオミング, アレックス・アングロ
★★★★



2002年02月02日(土)
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