nikki-site 雑文速報
 あいうえお順INDEX 



 ▼ デレク・ジャーマン『ヴィトゲンシュタイン』 (93 日英)


たとえば、ある人がこう言ったとしよう。
「自分の理解している言葉を聞いたとき、私はいつも何かを感じているように思う。それは、その言葉を理解していないときには感じられない何かである。」
これは、その人に特有な経験についての言明である。別のある人は、おそらくまったく異なったことを感じるであろう。しかし、このふたりが「理解する」という語を正しく使用しているならば、理解の本質はこうした使用にこそ存しているのであって、自分が経験していることについて彼らが何を言うかにあるのではない。
     (ヴィトゲンシュタイン『哲学探究』/藤本隆志訳)


 あうっ(;-_-;) なんでこんなのをもってくるかなね、デレク・ジャーマン。ヴィトゲンシュタイン。。。。そんなん知るかい(-.-;) じゃあ、なんで借りたんだよぉっておもろそうだったから。デレクの名前だよ、名前、デレクの名前で借りたんです。むぅ、「ヴィトゲンシュタイン」って知ってるのイギリスでも希少だろうな。それも、音楽や絵画とかの分野だったらわからんでもないけれど、哲学だ。大慌てでネットで調べたやんか。それでもようわかっとりません。
 それでもがむばる。頑張って見るのが偉い(笑)なんて、はい、わかっとらんでもおもしろいです(not funny but interesting)。そこはそれ、デレク・ジャーマンでありますからしてやってくれちゃっております。
 まずはオールセット。セットといっても、非常にデフォルメされたオブジェだけ。言ってみればとても演劇的なわけ。いくつかの箱であるとか布であるとかが配置されただけの舞台の上で演じられる芝居。だからって芝居を映像に残したなんてはずがなくてしっかり映画なわけ。ほんと、さすがデレク・ジャーマンなわけです。
 とにかく色彩がすごいんだよね。終始、モノトーンで抑えて、非常に演劇舞台的というのはバックが黒の闇に塗りこめられていて、つまり舞台奥に黒の緞帳があって、その前で演じられる。そこで原色が引き立つ。それもヴィトゲンシュタイン自身はバックに溶け込んでしまいそうな色でありながら、サイドを例えば、バートランド・ラッセル(マイケル・ガフ)が原色の赤であるとか。だからバートランド・ラッセルや、ケインズ(ジョン・クエンティン)らがどんどんヴィトゲンシュタインを引っ張っていくことができるわけだね。時間の軸の使い方も、少年期のヴィトゲンシュタイン(クランシー・チャッセイ)と哲学博士となってからのヴィトゲンシュタイン(カール・ジョンソン)を同時並行に、あるいは重ねてしまうのもvery pleasant pineappleなのでした。
 あたりまえのことだけど、ヴィトゲンシュタインの哲学を簡単に解き明かしてくれるというようなはずがないです。それならそれで彼自身が書いたものを読めばいいわけで、それを1時間少しの中に押し縮めるというのは暴挙というもの。どちらかというと、ヴィトゲンシュタインの哲学を鏤めて、彼の生涯を追いかけていくことでできあがってきてるのは、やっぱりヴィトゲンシュタインではなくて、デレク・ジャーマン自身の像だったんだなと。ボク自身がヴィトゲンシュタインについては全く無知なんだけど、たぶんゲイでなかったはず。それをジョニー(ケビン・コリンズ)という美形の若者を出してくるのもデレク自身の像だったから。
 ちなみにイギリス・日本の共同製作になっているのは製作総指揮としてアップリンクの浅井隆が加わっているから。

Wittgenstein
監督 デレク・ジャーマン
脚本 デレク・ジャーマン / テリー・イーグルトン / ケン・バトラー
撮影 ジェームズ・ウェランド
音楽 ジャン・レイサム・ケーニック
出演 クランシー・チャッセイ / カール・ジョンソン / マイケル・ガフ / ティルダ・スウィントン / ジョン・クエンティン / ケビン・コリンズ / ネイビル・シャバン
★★★★★




2002年02月05日(火)
 ≪   ≫   NEW   INDEX   アイウエオ順INDEX   MAIL   HOME 


My追加