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 ▼ ロウ・イエ『ふたりの人魚』 (00 日独中)


 はじめに描かれる蘇州河の川の上から見た上海の町にどこか懐かしさをおぼえる。それはボク自身に、上海と大阪にすごく似通ったイメージをもっているからなのか(上海、大阪は姉妹都市提携を結んでいる)。昭和30年代の大阪といまの大阪をつきまぜたようなどこか猥雑な雰囲気。『泥の河』のイメージが膨らんできたりもするのだよ。
 この物語の語り手は、この映画の中で「僕」といっていることから「僕」としておこう。僕は上海に住むビデオカメラマン。はじめの川の上から見た上海の町の描写も僕のカメラなのだ。そして物語は最後までこの僕の視点、または僕のカメラのアングルとして映画そのものが進んでいく。だからカメラもほとんどが手持ちで、ときには僕自身の目となりメイメイの閉じた目の顔がすぐ近くに迫ってきたりする。だからって「ハメ撮り」やってんじゃないです。 ←マジに書いてんだからちゃかさないの
 『ふたりの人魚』というタイトル、原題はずばり『蘇州河』で異なるが、でもこれからすぐ思い出すのは『ふたりのベロニカ』。この『ふたりの人魚』も同様にドッペルゲンガー譚といえるかもしれない。メイメイとムーダン(ともにジョウ・シュンの二役)が人魚というキーワードでつながる。『ふたりのベロニカ』では共に実在する人間であったけれど、この『ふたりの人魚』ではそれは疑問。「でもこれは僕の嘘かもしれない…」と自身で言うように、それは僕(監督自身とも考えられる)の中でムーダンは創られた人間。というより、ムーダンとマーダー(チア・ホンション)の物語は僕の中のフェアリーテールなのだ。そうして「僕」とメイメイの関係さえもフェアリーテールになってしまって、やっぱりそこに残されるのは蘇州河の川の上から見た上海の町。アホみたいと思うけれど、「悲しい色やね」

 「嘘つき」と言われても、死ぬまで探していたい。。。。

蘇洲河 (Suzhou he)
監督 ロウ・イエ
脚本 ロウ・イエ
出演 ジョウ・シュン / チア・ホンション / ヤオ・アンリェン / ナイ・アン
★★★★



2002年02月16日(土)
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