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 ▼ 鈴木清順『野獣の青春』(63 日活)


 タイトルバックはモノクロで、そうそうこの頃の映画というのは、のっけからタイトルバック。いつから映像にはさまった形で、クレジットが流れるようになったんだろ? とにかく、宍戸錠やら渡辺美佐子やら鈴木清順の名前が流れた直後にモノクロで始まったかと思うと、パッと花だけが赤く着色されて、清順のペースに引っ張り込まれる。で、すぐにカラーになってしまう。
 とにかくこの頃は日活の意向が強くて、なんせ日活といえば飛ぶ鳥も落とさんばかりの勢いがあったころでしょ。だから、とにかくアクションにしたてあげなアカンし、そこに姑息に(笑)、自分の美学をはさんで行く鈴木清順の心意気やよし。だからときとしてその落差が激しかったりする。またそれが唐突でうれしいんだけど。
 キャバレーのマジックミラー越しのシーンで、宍戸錠が金子信雄のチンピラに拉致されるところがあるんだけれど、暗い中で宍戸錠が拉致された瞬間にパッとストリッパーに照明があたって浮かび上がるなんてのは、何でもないように見えて、ほんとどきっとさせられる。こういう映像のダイナミズムは、そこいらにいくらでも転がってるようで、鈴木せぇぇじゅぅぅぅんっ!と叫んでしまいそうになる。
 それとか、川地民夫とナイフでやりあうところなんか、テーブルの下でもみあう二人の手のナイフが切りつけるのはテーブルの裏に描かれた絵だったりして、そういう絵なんか、絶対そういうところになんか描かれてるはずなんかないんだよね。つまりはリアリズムを逆手にとってしまってるわけ。
 信欣三の事務所では、壁一面に映像が映しだされて、それに神棚が重なってたり、小林昭二と香月美奈子のセックスシーンなんて、あらっと絶対に思ってしまうんだから。このシーン、絶対ええよねぇ。
 ボクの好きなのは、クルマで襲撃かけるときに、そこで西部劇よろしく後方から追いついたクルマのみんながパンストかぶってるのね。それがとてもわざとらしいアップになるとこ、なんとも言えずにいいんだなぁ。そのあと投げ込まれた発煙筒にヤクザが慌てふためいてクルマから逃げ出すのも笑える。
 とにかくヤクザアクションだなんて思っていたらこけること請け合います。

 監督 鈴木清順
脚本 池田一朗 / 山崎忠昭
原作 大藪春彦
撮影 永塚一栄
美術 横尾嘉良
出演 宍戸錠 / 渡辺美佐子 / 川地民夫 / 香月美奈子 / 金子信雄 / 信欣三 / 小林昭二 / 江角英明
★★★★☆



2002年03月17日(日)
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