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 ▼ スタンリー・クレイマー『渚にて』 (59 米)


 核戦争の結果、地球全体が核汚染により絶滅。辛うじて比較的汚染されていないオーストラリアではなんとかまだ人間が生き残っているが、彼らにもじわじわと、核の恐怖が迫ってきつつある。なんとか生き延びる方策を求めて、潜水艦による探査が行われる。なんて言ってしまえば、パニック映画みたいだけど、ところが、ずしっと来る。それはすべからく大人、大人の映画だから。
 確かに、こうなる以前に、人類全体がパニックになっても不思議ではない。だけれど、そうしたパニックをいっさい排除してしまったところにこの映画の凄さがあるんじゃないか。
 このそうそうたるキャストを見ただけで凄すぎるっていうのわかるでしょ。これならアホくさいパニックなんていらんやんねぇ。というか、かつてはこういうふうに見せることができる連中がごろごろいたんだよねぇ(゜゜)という見方もできるね。ペック、パーキンスは言わずもがな、とくにフレッド・アステアってこんなに渋かったのだ。どこで踊りだすのかと(笑) ただアステアのカーレースはあれ?っておもってしまうけど、このシーンだけ浮いてしまってる気がするんだけど。
 サンフランシスコの廃墟と化した街の眺め、これは絶対に見ておくべきだよ。なんか頭をがぁーんと殴られたような怖さがある。そのサンフランシスコの街で最期を迎えたいという水兵が一人潜水艦から抜け出して、魚釣りをしているシーンもじーんと来るよ。「じゃ、見送ってくれ」と一瞬潜水艦を浮上させて去っていくのだ。
 もはや絶滅したアメリカ本土から無電が送られてくるという挿話もおもしろかった。水力発電が誰も生存していない土地で稼働し続けていて、無電を送ってくるのは。。。。それを防護服に身を包んで調べに行くとき、発電所や、無線送信所などのオートメカニックな無機的な質感、さらには潜水艦内部のメカニックな無機的な質感、それらとオーストラリアにまだ残された自然との対比がなんとも凄いね。
 雑多な人たちでいえば、エバ・ガードナーがやってくるときの潜水艦の水夫たち、ワインバー?に集まる人たち、黙って額のゆがみを直す老ボーイ(この老ボーイがラストで誰もいなくなったビリアード台で一撞きするシーンもいいなぁ)、そして《まだ時間はある》の横断幕の下の人たち、黙って永遠睡眠薬の配給を受け取る人の列。。。。これらの人たちに静かに静かにパニックを語らせるのだから
 をっと書き忘れるところだった、お尻ペンですよー(笑)
 ちなみに1959年というと、米ソの冷戦まっただ中です。

On the Beach
監督 スタンリー・クレイマー
脚本 ジョン・パクストン
撮影 ジュゼッペ・ロトゥンノ
音楽 アーネスト・ゴールド
出演 グレゴリー・ペック / エバ・ガードナー / アンソニー・パーキンス / フレッド・アステア / ドナ・アンダーソン / ジョン・テイト / ローラ・ブルックス
★★★★



2002年03月26日(火)
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