nikki-site 雑文速報
 あいうえお順INDEX 



 ▼ 黒木和雄『泪橋』(83 日)


 原作からして、いかにも70年代をひきずっているような。たしかに監督の黒木和雄にしたってそうだし、出てくるのも、佳村萠以外は70年代を体現しすぎてますって。だいたい、過激派が○機に追われて。。。なんてのは、臭すぎる。
 考えてみれば、82年下半期芥川賞が唐十郎『佐川君からの手紙』で、82年上半期直木賞が村松友視『時代屋の女房』 その二人がその翌年に組んで、脚本書いてんだから「70年代」と思えるのも当たり前と言えば当たり前。
 70年代当時この二人仲良かったからねぇ。状況劇場(現・唐組)の機関誌に村松はいつも書いてたしね。だから「イエスの方舟」事件をネタにもってくるのなんか、完全に唐の手口なんだけれど、村松の原作にもきっちり「イエスの方舟」は入っている。原作段階から唐の入れ知恵と考えられないこともないけれど。とにかく、村松に唐が影響しているのは間違いないと思う。
 映画になって入ってきた原田芳雄と佳村萠の兄妹譚は、唐がずっと使っているパターン。さしあたり、渡瀬が根津甚八、佳村萠が李礼仙の役回り。原田芳雄は大久保鷹ってところかなぁ。原田芳雄のファンは否定するだろうけれど(笑) その関係に茶々入れするのが不破万作だなんてまさに状況劇場っぽい。こういうところは状況劇場の芝居を見てたりすると、ははぁ〜んとわかるんだろうけれど。
 だいたい佳村萠がいたから作れたような映画だという気がしないでもない。それがまた状況劇場っぽいと言えるかもしれない。だから佳村萠が光るように作られているし、また実際ビカビカに光ってる。
 いわゆる性格俳優のオンパレードな中にあって、出色なのは瀬川新蔵と殿山泰司のコンビ。殿山泰司は言わずもがな、瀬川新蔵がもう最高。原田芳雄なんてぶっ飛んでしまってんだから。佳村萠に瀬川新蔵と殿山泰司のコンビが加わったところで、あの渡瀬恒彦が狂言回しでしかないんだから。ちなみに瀬川新蔵という役者さんはTVの時代劇なんかでちょこちょこ端役で出ていたようだけれど、ボクは佳村萠、彼女も林海象監督のところで2本ほど出てそれっきりなのも惜しいんだけど、その佳村萠以上に気に入ってます。
 鈴ケ森にまつわる話、つまり白井権八と小紫の寓話がぐっと補強されてくる。そして映画になってぐっと際だったのが、白井権八と小紫の寓話。それが渡瀬恒彦と佳村萠にオーバーラップするのはもちろんのこと、なんと殿山泰司と瀬川新蔵にまで憑依ってしまうってところがすごいやね。しっかり美術の木村威夫も遊んでくれちゃってるし。
 とにかく監督の黒木和雄を先頭に、70年代そのものなんてがよってたかって遊んじゃったってところ。だから70年代の日本映画の暗さに耐えられない人にはちと辛いかも。


監督 黒木和雄
脚本 村松友視 / 唐十郎
撮影 大津幸四郎
音楽 松村禎三
美術 .木村威夫
出演 渡瀬恒彦 / 佳村萠 / 原田芳雄 / 瀬川新蔵 / 殿山泰司 / 不破万作 / 浜村純 / 藤真利子 / 宮下順子
★★★★





2002年04月05日(金)
 ≪   NEW   INDEX   アイウエオ順INDEX   MAIL   HOME 


エンピツ投票ボタン↑
My追加