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 ▼ ダニエル・シュミット『ベレジーナ』(99 スイス,独,オーストリア)


 ベタな筋だけ追ってみとくと、スイスに憧れてスイスにやってきたイリナ(エレナ・パノーヴァ)は、表向き高級デザイナー=影で高級売春元締め(どんなんや?(笑))のシャルロッテ・デー(ジェラルディン・チャップリン)に抱えられて、スイス政財界のじじいども相手に、娼婦をしている。彼女の望みは、彼らに取り入ることでスイスの市民権を得、成り上がること。ところが市民権を裏で手引きしてくれるはずが、口先だけの空約束になってしまったことから、睡眠薬(実は朝鮮人参だった!)を大量に飲み、朦朧とした状態で、かけた電話が、スイスの国家組織を転覆させ、そして最後には、新スイスの女王に成り上がってしまうという、なんともかんとも能天気な物語。きっと、ストーリーだけを追う人には、なんじゃこれ?モンの極致。どうしようもない★1つ映画。
 しかし、やってくれました、ダニエル・シュミット! 彼は知る人ぞ知るルイス・ブニュエル・フリークなんですねぇ。なんでもルイス・ブニュエルにまで会いに行ったりもしたというほど。そうすると、上にかいた能天気なストーリーというのもなるほどってわかるでしょ。
 いきなりです。エレナ・パノーヴァが射殺される。あ、あのねぇ、そんなもの反則技も甚だしい。たとえば、ニコール・キッドマンがいきなり射殺されるとなると、をっ、どうなっとんのだ!?と、だが、キッドマンが射殺されて、それっきり出てこないなんてことはありえないわけだから、あ、そかそか、こういう唐突なヒロインの提示の仕方というのもありなのねと、わかってしまうんだけれど、ところでエレナ・パノーヴァって知ってた? 念のためにAMGでYelena Panovaを検索してみると、この『ベレジーナ』しか出てこなかった。そんな彼女がタイトル終わったら、元気に出てきている。しかも同じシーンが繰り返される。あ、これは、将軍(マルティン・ベンラス)とのお遊びだったのね、と気づかされるまでにえらい回り道をさせてくれるんだから、ほんまに。。。。だいたい、きっと女優がこのエレナ・パノーヴァだけならもたないと思うよ。イリナの描き方自体、全編通して天然まるだしだもんね。そこんところを渋くジェラルディン・チャップリンをもってくるところがもう心憎い。
 で、さぁここからが大変。もうブニュエルのオン・パレード。脚フェチありーの、変態変態変態変態変態、大変だわ。『小間使いの日記』だわ、『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』だわ、「はい、右足をあげて....かかとで左に回って・・・」と。よくつきあうよねぇ、男優陣(^_^ゞ おっさん、アホか。。。。けっこう愉しんでたりして(汁) この序盤から中盤にかけては、ブニュエル趣味でなかったらちょっと冗長かもしれないけれど、ボクはそこまでやりますかぁぁってうれしかった(*^_^*)
 思わずブニュエル変態チックに目を奪われてしまうけれど、それぞれの部屋のセットや、博物館のセットなどの美術がいいのね。真っ赤なソファだったり、甲冑がずらっと並んでいたり、博物館の首からぽろっと鬘がとれたり。
 で、終盤のテンポのいい、どんでん返しもいうてみれば『博士の異常な愛情』だったりして、思いきり、ボクらのイメージの中にあるスイスを嗤いとばしてくれます。まぁ、それがダニエル・シュミットの狙いなんだろうけどね。
 ダニエル・シュミットって、こういうふうな見せ方もできるんだと再認識。


Beresina oder Die letzten Tage der Schweiz
監督 ダニエル・シュミット
脚本 マルティン・ズーター
撮影 レナート・ベルタ
美術 カトリン・ブルナー
音楽 カール・ヘンギ
出演 エレナ・パノーヴァ / ジェラルディン・チャップリン / マルティン・ベンラス / ウルリヒ・ノエテン / イヴァン・ダルヴァス / マリーナ・コンファローネ / シュテファン・クルト / ハンス・ペーター・コルフ / ヨアヒム・トマシェフスキー
★★★★☆



2002年04月07日(日)
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