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 ▼ ジャック・オーディアール『天使が隣で眠る夜』 (94 仏)


 まずはこの邦題気に入りません。フランス語わからんから、何とも言えないけれど、アメリカでのタイトルは『See How They Fall』は原題『Regarde Les Hommes Tomber』の直訳なのか? たぶんきっとどこにも「天使」なんてのはないと思うんだけどね。誰か、教えてくれるの期待(ほとんど名指しみたいなもんですが・・・)。とにかく「天使」アレルギーなのです(笑) 同じなら『堕天使が隣で眠る夜』とでもやってほしかった。
 さて、何かどっかで『レイン・マン』の焼き直しだ、なんてことを読んだんだけれど、『レイン・マン』・・・・忘れた(笑) 頭の足りない兄貴を利発な弟がどうのこうのって話だったことだけ覚えてる。その組み合わせが焼き直しなんかねぇ? 頭の足りないジョニーことフレデリック(マチュー・カソビッツ)と、その彼を支えるマルクス(ジャン・ルイ・トランティニャン)という組み合わせでそうは言えない気がするけど。
 どうしようもない年くったアウトロー=マルクスと、頭が足りないために社会から疎外されている少年ーフレデリックが、たまたまヒッチハイクで出会うというシチュエーション。マルクスは自分の博打の借金のかたに、恐喝から、ついには殺人までギャングに命令される。ところがその殺人を実行したのは、ジョニーと名乗るようになったフレデリック。マルクスの代わりになぜジョニーが殺人を犯すようなことになったか、なんて言い出したら、ほんとにつまらない。話全体が矮小化されてしまうよね。
 一方、その殺人によって殺されたのは刑事。テリー・ホワイトの原作『真夜中の相棒』では殺されたということになってるらしいが、映画では植物人間となって入院している。その刑事の友人で、その事件現場の近くにいたのがシモン(ジャン・ヤンヌ)。シモンは友人の事件の捜査の杜撰さに業を煮やして、一人で犯人を追いかけていく。
 と、解きほぐしてしまえば、ストーリー的にはシンプルでつまらん。このストーリーをまんまやってたんじゃ、セザール賞なんてもらえっこないやね。シモン、それとマルクス+ジョニーとのなんら関係のない別々の時間、別々の場所での二つの話が、小気味よいテンポで切り替わっていく。この進め方がなんともすごい。時間、空間が、進んでいくにしたがってじりじりと近づき、最後にひとつに重なるのだ。符号は犬ですよ、犬。
 ほかにもいっぱいあるなぁ。照明がね、例えば、マルクスとジョニーが初めて一緒にトラックに乗ったとき、それとシモンがジョニーに初めて会うとき、色が違いこそすれ、この二つのシーンを符合させてみたり、それとか、二つのコーヒーカップに当った光で時間の経過を表してしまうなんてすごすぎる。カーテン越しにあてた光で染め上げてしまうとか。だけど、それだけでなくて、地のシーンでの光の量、これがボクは好き。
 マチュー・カソビッツがいいしねぇ、「金、返して下さいよ」には笑えるしね。こいつ監督やるより、役者の方がいいかも(笑) ジャン・ヤンヌもいいし、ジャン・ルイ・トランティニャン、もう渋すぎ。
 そしてラスト。先に書いた、そのままじゃ矮小化されてしまうテーマをこういう形で見せてくれるとは!

※ 早速マイコロリさんから、明快なお答えをいただきました(予想通り)。原題「Regarde Les Hommes Tomber」は、直訳すると「男たちが落ちるのを見ろ」あたりになるそうです。つまり英語でのタイトルはそのまんまだね。なるほどこの訳なら納得がいく。多謝

Regarde Les Hommes Tomber
監督 ジャック・オーディアール
脚本 アラン・ル・アンリ / ジャック・オーディアール
撮影 ジェラール・ステラン
音楽 アレクサンドル・デプラ
出演 ジャン・ルイ・トランティニャン / マチュー・カソビッツ / ジャン・ヤンヌ / イボン・バック / ビュル・オジェ / クリスティーヌ・パスカル
★★★★★



2002年04月22日(月)
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