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 ▼ 呉天明『變臉 この櫂に手をそえて 』(1996 中国)


 これ、ヤバイと思った。いきなり子供をどんと真ん中に据えた映画だったから。こういう子役がメインになっているのはどうも苦手なんよね、どうも小まっしゃくれたところが鼻についてイヤ。
 ところがどっこい、このクーワーのチョウ・レンインはそんなこちらの思いはきれいに吹っ飛ばしてくれた。もうすごい、すごい。それもそのはずで、4つの頃から雑技団で鍛え上げられたいう。だからちょっとだけ見せる雑技にしてもホンモノ。が、すごいのは、ホンモノの雑技なんかではなくて眼。確かに芝居そのものは決して上手いわけでもないのだけれど、この子のような眼をしたハリウッド子役なんか見たことがない。ハリウッドでちょろちょろしてる子役の方が芝居やらせたらずっと上手いかもしれない。だけどこの子が発するオーラのようなものが感じられなくて、何だか生ちょろけてしまってる。だからガキんちょものは見たくないんだけど。それがやっぱり天性のものではなくて、4つの頃から雑技団に入っていたというくらい、実のところ、子どもとしてあまり幸福な生活をしてなかったという。そんなところが本人が望む望まないに関係なく決定的な差になって出てきてしまったと言ってもいいんじゃないか。クーウーが一人になってさまようところなんかで、クーウーの顔に汚しをかけたメイクさせていたんだけど、あれ、絶対必要ないです。わざわざ汚しをかけなくても、チョウ・レンインなら、意図するところを引っ張り出してくるはず。
 とにかくこのチョウ・レンイン一人で、チュウ・シュイをはじめオトナたちを受けてたってしまう。ラストで命を懸けて屋根から逆釣りになるシーンは、前半で京劇の中で女形役者リャン(チャオ・チーガン)が見せる菩薩得道のシーンを受けてたっているのだけれど、これを見比べてもどれだけ凄いかというのがわかる。やられたっ!と思ってしまったもんね。
 いきおいね、チョウ・レンインに目が奪われてしまうんだけれど、殿山泰司をスリムにしたような變臉王(チュウ・シュイ)、この人の淡々とした演技なくしたら、この映画はいやらしくなっただろうなと思う。チュウ・シュイとチョウ・レンインの個性がケンカしてしまって、下層のお涙頂戴ものがたりになってしまったんじゃないかな。
 このように、淡々と物語を進行させて、ずこーんとぶちこんでしまう、これだね。
ちなみに變臉(へんめん)とは、観客の目の前で次から次と顔の面を変えていく四川省に伝わる大道芸

變臉(Bian Lian)
監督 ウー・ティエンミン
脚本 ウェイ・ミンルン
原作 チェン・ウェングイ
音楽 チャオ・チーピン
出演 チュウ・シュイ / チョウ・レンイン / チャオ・チーガン
★★★★★



2002年05月29日(水)
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