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 ▼ 神代辰巳『青春の蹉跌』 (1974 日)

 こういう70年代モンをあらためて見ると、この『青春の蹉跌』に限らず、どこかこそばゆいような気恥ずかさがあるんだよね、困った。どこかで、そうじゃないだろ、ってところもあって、それはその当時から、そうじゃないよなぁってところがあって、うーんとそれはひょっとしてボク自身が覆い隠しておきたいようなことなのかもしれないんだけど。
 石川達三の原作ね、ボクが高校生のころに単行本で読んで、たしか出てすぐの頃ね、それまで石川達三は2つ3つほど読んでいて、この『青春の蹉跌』を読んだときに、なんてくだんないのだよって、それ以降、石川達三は全く読んでない。だからそれから数年経って、映画化されたこの『青春の蹉跌』だって、ほとんど食指が動かなくて、たぶん見たはずなのに、ほとんど記憶にない。だから言うてみれば、30年から経てはじめて見る映画。そして神代辰巳はもういない。
 さてと、やっぱり今見ると気恥ずかしいが先に立ってしまうのはどうしようもない。そうじゃない、そうじゃなかっただろ、というのと、自分自身の《青春の蹉跌》、蹉跌とは言い難いものかもしれないけど、を重ねてしまってたりもする。こればかりは避けようがない。
 石川達三の『青春の蹉跌』ではなくて、やっぱり神代辰巳の『青春の蹉跌』だな。と、思えるのは、ずばっと雪山での滑落シーン。この落ちて行き方は石川達三じゃないですよ、神代辰巳そのものだなって思う。この滑落のところにきてやっと、ずっとのしかかっていた気恥ずかしさから解き放されたって感じがする。
 ボクは、石川達三の原作から通してこの『青春の蹉跌』にある「男の野心、女の打算」というテーマに一種のもやもやを感じてたんだけど、原作はそこんところに収束してしまっていてつまんないなと思ったの。その頃の高校生のボクが読みとったことだから間違ってるかもしれないけど。そうじゃなくて、この神代の『青春の蹉跌』では、あの滑落は全編にわたるボデーブローのような「エンヤトット」のやりきれなさからの解放、それがすべてなんだと思う。やけにショー健のおんぶというのがすごく気にかかるんだけど。
 ところで芹明香の「100円ちょうだい」女はあの頃ほんとにいたよなぁ。


製作 田中収
監督 神代辰巳
脚本 長谷川和彦
原作 石川達三
撮影 姫田真佐久
美術 育野重一
音楽 井上尭之
出演 萩原健一 / 桃井かおり / 檀ふみ / 河原崎健三 / 荒木道子 / 高橋昌也
★★★★☆



2002年07月03日(水)
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