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 ▼ カルロス・サウラ『血の婚礼』(1981 スペイン)


 この『血の婚礼』、『カルメン』('83)、『恋は魔術師』('86)と続く、アントニオ・ガデスと組んだフラメンコ三部作の第1作目。でもあとの2つ見てない。見たのは『タンゴ』('98)だけ。その『タンゴ』は「文句なしに★5つつけて」んだなぁ。と、なると、この『血の婚礼』も★5つかなぁ。『カルメン』はビゼーの歌劇で知らんもんはおらんというくらいのだけれど、この『血の婚礼』の元はロルカの戯曲。ロルカ、アントニオ・ガデス、カルロス・サウラ、この三枚看板で、骨太なスペインどっぷりになることは当たり前のこと。
 さてと、この『血の婚礼』は元々、アントニオ・ガデスの舞踏団の演目だったわけで、それをカルロス・サウラがいかに映画として見せるかということになるでしょ。ボクは『タンゴ』しか見てないので、いきおい『タンゴ』との比較になってしまうんだけど、バックステージと表の舞台との境界の曖昧なのは、『タンゴ』でも見られたこと。というか、『タンゴ』に、この『血の婚礼』からの手法が受け継がれたというべきですね。つまり、劇場の楽屋に舞踏団の一行が到着してから、楽屋風景、稽古風景をとらえていく。そして最終リハーサルという形で『血の婚礼』そのものを見せてしまう。だからアントニオ・ガデス舞踏団によるステージそのものは全くなし。
 おもしろいのは、『血の婚礼』そのものを含めて、バックステージでのこととして表現されるわけで、そこには実際どうかはわからないけれど、団員たちの間の愛憎などがあるはずで、それが『血の婚礼』とオーバーラップしてしまう。『血の婚礼』はまさに愛憎劇なわけで、舞踏団のステージで表現されたとしても見る側は、その愛憎はステージ上だけのこととしてとどめてしまうでしょ。ところがバックステージという形で見せられると、実際に団員達の間で、同じような愛憎がうずまいてるんじゃないかと、たとえそれが仕組まれた愛憎であったとしても。すなわち二重構造の愛憎劇になってしまった。そこのところがおもしろいんだよ。
 『タンゴ』ではね、照明の切り換えとかシャープで、それがすごく目をひいたんだけれど、この『血の婚礼』ではひたすらベタ明り。スクリーン正面の窓から自然光のみ(もちろん技術的にそれだけの明りで撮れるわけじゃないのだけれど)によって、フラメンコダンスを浮き上がらせる。そのことでフラメンコそのものをじっくり見せることにできてるんだなと思う。

Bodas de Sangre
製作 エミリアーノ・ピエドラ
監督 カルロス・サウラ
原作 フェデリコ・ガルシア・ロルカ
撮影 デオ・エスカミーリャ
振付 アントニオ・ガデス
音楽 エミリオ・デ・ディエゴ
出演 アントニオ・ガデス / クリスティーナ・オヨス / ファン・アントニオ・ヒメネス / ピラル・カルデナス
★★★★★



2002年07月11日(木)
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