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 ▼ アキ・カウリスマキ『マッチ工場の少女 』(1990 フィンランド)


 ふつうなら救いようがない話なのにねぇ、なぜかホッとしてしまう、納得してしまう。そんなことが認められたっていいじゃないかと。
 【ネタばらし】マッチ工場に勤める全くさえない女イリス(カティ・オウティネン)。当然のことながら男いません。ディスコに行っても誰も声をかけてくれない。男関係に関してだけさえないのならまだしも、家庭環境も劣悪。母親は彼氏と同棲しておるし、その二人と同居せざるを得ないイリスはマッチ工場での稼ぎを家にいれておるのであります。つまり母親と彼氏を食わせてるのですな。
 やっとのことで給料から服を買ってディスコに行こうとすると、金をごまかしたと、恥知らずとなじられるは、揚げ句に返品してこいと。それでもその服を着て、着るのも家で着れないものだから有料トイレだかのシャワー室で着替えてディスコに。
 ちょいとおしゃれな服を着ただけで、男が寄ってきて、ベッドイン(えっちシーンはありません!) さてと、やっと男ができたと思いきや、当然のことながら男にしてみれば一夜の戯れよ、アナさえあればそれでよしってところで、けんもほろろにふられるのでありました。ところが、その一夜の戯れ、百発百中。ご懐妊〜〜〜っ! そのことを手紙で告げると、帰ってきた返事はただ一言「中絶してくれ」 そのことも母親にばれて、母親の彼氏に「家を出ていけ」とせまられる始末。
 こうしてイリスの復讐劇は始まるのでありました。まずは薬屋で殺鼠剤を買い求め、それをもってイリスをふった男に、つぎは酒場で言い寄ってきた男に、そして母親と彼氏に、酒に殺鼠剤を混入して飲ませるのでありました。当然逮捕されました。以上こんで終わり

 よくもまぁこんだけイリスを痛めつけるのか。カウリスマキは、ボクはこれで2つ目なんだけど、ダメパターンというのは徹底しとるね。ただね、ラース・フォン・トリアーとは全然ちがう。いやらしさがないというと誤解されそうなんだけどいやらしさがない。憐れみを誘おうというようなところがまったくなくて、じゃ、これならどうなる?という問いかけの上に成り立ってるから。
 この『マッチ工場〜 』で驚かされるのはほとんどといっていいくらいセリフ回しというものがない。またときにディスコ、といってもかつてのマハラジャなどとは全く趣を異にする、どこかイリスに合わせたようなうら寂しささえ漂うディスコなんだが、そこでバンドが歌う歌によってイリスの心情を語らせてみたりするだけ。唯一あるとするなら、イリスの手紙。これはまさにカティ・オウティネンの独壇場ってところ。全体を通じてカティ・オウティネンという女優をもってして表現できる凄みがある。
 この『マッチ工場〜』にしたって、『浮き雲』と同じようにパッと見てのおもしろさはなかなか伝わってこない。『浮き雲』では★★★☆しかつけることができなかった。だけど、ボデーブローのように効くインパクトがあるんだよねぇ。見た瞬間には、ん?と?がついてもあとからじんわりこたえてくる。★★★☆にしてはいろんなシーンが印象に残り気になって仕方がない。この『マッチ工場〜』もあとからずし〜んとこたえてきそうな気配がして仕方がない。頭の中でマッチ工場の機械がぐるぐるぐるぐるずっと回り続けてそうな気配がする。

Tulttikkutehtaan Tytto
製作 クラウス・ヘイデマン / ヤーコ・タラスキビ
監督・脚本 アキ・カウリスマキ
撮影 ティモ・サルミネン
美術 リスト・カルフラ
音楽 レイヨ・タイパレ
出演 カティ・オウティネン / エリナ・サロ / エスコ・ニッカリ / ベサ・ビエリッコ / シル・セッパラ
★★★★☆



2002年07月31日(水)
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