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■ ▼ カルロス・サウラ『カルメン』 (1983 スペイン)
やっと見つけた『カルメン』。これまでに『血の婚礼』('81)、『恋は魔術師』('86)で★5つつけてんだから、これも★5つは見る前から当確だったわけで、いざ見たら、すごい、すごい! 『カルメン』の場合は動かしがたいメリメの原作あり、ビゼーのオペラありで、それをカルロス・サウラガ取り込んでいくかというのにかかってくるんだけれど、それは見事としか言い様がない。 アントニオ・ガデス舞踏団の出し物としての『カルメン』がある。もちろん、ドン・ホセはアントニオ、彼の腹心のクリスティーナ・オヨスはカルメンとするにはずばり薹がたってしまっている(それをアントニオがクリスティーナにずばっと言うんだから(^_^ゞ)。そこでスカウトされてきたのが、その名もカルメン(ラウラ・デル・ソル)。このカルメンをアントニオとクリスティーナの手で、カルメンに仕立て上げていくというのがまず大きな入れ物。 ところがその稽古をつけてる最中に、ほら、よくあるじゃないですか、演出と主演女優がその気になってしまうのって。アントニオ-カルメンがドン・ホセ-カルメンに重なっていく、なんとカルメンとアントニオはメイク・ラブしてしまうわけ(ここのところ、原作ではドン・ホセがカルメンの部屋へ行くのに、ここではカルメンがアントニオの部屋に行く)。するとメリメの原作の通りにアントニオはカルメンにぞっこん入れ込んでしまうのだけれど、カルメンの方はカルメンなわけで「自由な女よ」。すごく象徴的なのは「ウノドストレスクァトロ・・・・」とアントニオがカルメンに稽古を付けていたのが、このメイク・ラブ以降にカルメンがアントニオに「ウノドストレスクァトロ・・・・」と迫って行くシーン。これって男と女の立場の逆転という意味でハイライトだと思う。 きゃははは、ややこしいっしょ。虚構と虚構が入り乱れてしまう。現実と虚構じゃなくて、虚構と虚構が入り乱れてるわけで、ラストでも、ドン・ホセがカルメンを刺したように、アントニオはカルメンを刺してしまう。だけど、これとてすぐに現実にカルメンを刺し殺したとは言い難いな。だからといって、原作からひどく逸脱してしまうのかというとそうでもなくて、ビゼーのオペラで演じられる『カルメン』より原作に忠実。それでいて「ハバネラ」「花の歌」ときっちりビゼーから挿入されてるし、もちろん舞踏団によるフラメンコの見せ場たっぷり。 どこからどこまでがフラメンコ舞台の上でのことでどこからが舞台を降りてのことだとか、とやかく考えてるより、ただただ見とれてるだけできっちり『カルメン』に入ってしまえるというなんともすげぇ〜!としか言い様がないなぁ。
Carmen 製作 パトリス・ルドゥー 監督 カルロス・サウラ 脚本 カルロス・サウラ / アントニオ・ガデス 原作 プロスペル・メリメ 撮影 テオ・エスカミーリャ 音楽 パコ・デ・ルシア / ジョーン・サザランド / マリオ・デル・モナコ 出演 アントニオ・ガデス / ラウラ・デル・ソル / パコ・デ・ルシア / クリスティーナ・オヨス
★★★★★
2002年08月22日(木)
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