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■ ▼ アニエス・バルダ『幸福』 (1965 仏)
これ、いまを去ること30数年前にリアルタイムでちゃんと映画館で見てフランス映画に萌えてしまったといういわくつきのボクにとっての記念碑的映画。そしてその後の30数年間に1度も見たことがなかったのに、見直してみて、なんでこんなに鮮明に覚えているのか、ちょっとビックリしてるところ。 フランソワを演ってるのはいちおうジャン・クロード・ドルオーという俳優さんだけれど、それ以降出てるの見たことない。そしてフランソワの家族、奥さんのテレーズ、娘のシズー、息子のピエロとも、このジャン・クロード・ドルオーの本当の家族。つまり家族がそのまんま、家族の役で出演してしまったという、これはアニエス・バルダのまさに飛び道具なんだろう。 話としては、ごく平凡な家庭を営んでいるところに、旦那のフランソワが郵便局のねえちゃんエミリー(マリー・フランス・ボワイエ)とイケナイ関係に陥ってと、非常につまらない不倫話。フランソワの論理にぶち切れてしまう女性もたぶんいるだろうな。男のボクでさえこいつ何を身勝手なことほざいとるねんと思ってしまうんだけれど。 そのことは棚に上げといて、ごくごく平和でいわゆる愛に包まれた家庭を、短いカット割でつないでいくのはすごく気持ちがいい。これって小津が家族を描くのとは全く逆の手法なのに底で通じている。家庭の中にあるものをオブジェとして扱うことで家庭の平和を描き出す。例えば鉢植えにコップで水をやるシーンであるとか。それがエミリーとの関係においてもそう。ここではさらに、フランソワとエミリーとの肉体をオブジェ化することで二人の関係を描き出してしまう。二人の肉体関係をその動作でなく、このようなオブジェで描き出してしまってるのはほかに見たことがない。それから多用されている映像が、深度の浅いカメラを使って、それを前後にピントを変えていくこと。それで奥行き感や見る側の目を操作してしまっている。これらの映像がモーツァルトの流れるような音楽で淀みなく繋がっていくんだから気持ちよくてたまらない。 棚にあげておいたのをもう一度下ろしてくると、それはある種のいたたまれなさというか、怖さというか、要するに残酷な結末をつきつけてくる。これって男じゃ描けないでしょ、女って怖い。ラストの黄金に染まる枯れ葉の林のシーンなんて凍りつきそうなくらい。そう思うと、一生懸命、弁明しようなんて男って可愛いもんだわ。 ラスト近くで、ちらっと挿入される1カットに悩んでね。
Le Bonheur 製作 マグ・ボダール 監督 アニエス・バルダ 脚本 アニエス・バルダ 撮影 ジャン・ラビエ 出演 ジャン・クロード・ドルオー / クレール・ドルオー / マリー・フランス・ボワイエ
★★★★★
2002年09月22日(日)
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