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 ▼ 田中登『江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者』 (1976 日)


 5月に実相寺監督の『屋根裏の散歩者』見たんだけど、そのときはまごれびゅに入れないで、うらまごに簡単に記した。
    つまらん。あざといレトロ趣味が鼻について白けてしまう。だいたいSM入れりゃいいってもんでないけれど、綿ロープの縛りはないよなぁ。まごれびゅに入れる気もなし。

 実相寺昭夫監督も好きだけどあれはなかったね。やっぱり『屋根裏の散歩者』といえば、田中登でしょ。時代を取り込むのが上手いんだね。たしかに田中登の場合も、わざとらしいレトロ趣味が見えたりするんだけれど。

  なるほどね、そういう終わり方にもって行きますか、と。

 ちょっとけりのつけ方どうするんだろうと心配してた。確かに76年当時なら、やってられないよなぁという結末でもオッケーだったろうけれど、この平和な21世紀にはやりきれなさが残る(宮下順子と石橋蓮司が裸で向きあったときは、一瞬、かの古谷一行と川島なお美が裸で向きあうシーンを連想したよ)。あのあとの宮下順子の目線にはびびりました。すんげぇ〜〜。そして大正ベルエッポクの終末に重ね合わせてしまうんだもん。なるほどね、となるわけです。
 話は相前後するけれど、まずは宮下順子と石橋蓮司の超強力タッグチームに、三上博史(実相寺監督の『屋根裏〜』)ではお話にならないね。それくらいこの二人の息苦しさったら、それだけで屋根裏を象徴してしまう。実相寺版では息苦しさも埃臭さもなかったんだよ。息苦しさという点から見てみると、田中版では天井裏に小窓がある。あれがひどく象徴的でもある。
 それから、実相寺版では、女優がぱっとしなかった。清水ひとみでは宮下順子にたちうちできませんよ。そのせいか、原作の『屋根裏〜』に終始してたのに対して、この田中版では宮下順子で、散歩者から逸脱して、覗かれる女にまで引っ張って行くことができた。なんと『人間椅子』まで引っ張ってきてるんだから。でも『人間椅子』のパートはいまひとつエロチックじゃなかった。これは多分に映画にするには難しいんだろうな。動きがはっきりと見えないから。ところがだ、それを田中登流の全く異る『人間椅子』を提示してくるのにはまいったね。渡辺とく子、彼女も個性がきついから結構浮いてしまってんだけど、田中登流『人間椅子』でやっとフレーム収まったって感じ。
 蛇足ですが、はじめに宮下順子が自動車で下宿屋にやってくるところ、自動車の窓に外の景色を流してます。さてその窓の中を二人の通行人がよぎるんだけれど、同じ二人が2回よぎるのには笑ったよ。


監督 田中登
脚本 いどあきお
原作 江戸川乱歩
撮影 森勝
出演 宮下順子 / 長弘 / 石橋蓮司 / 渡辺とく子 / 八代康二 / 田島はるか
★★★★☆



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2002年10月09日(水)
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