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 ▼ ロッセリーニ,ゴダール,パゾリーニ,グレゴレッティ『ロゴパグ』(1963 伊, 仏)


 「ロゴパグ」と呼ばれる怪獣が原爆を投下されたパリを逃れて、バンコクに行き、スチュワーデスにのしかかろうとするが、そこにやってきた男に捕らえられ1000リラで売り飛ばされ、地鶏ならぬ地獣となって後生を送ろうとするのを.......ちょっ、ちょっと待てぃぃぃ。知らんと思うて口からでまかせ三昧。
 ッセリーニ,ダール,ゾリーニ,レゴレッティだよっ。つまりこの4人の監督によるオムニバス4本。
 まずはトップバッター=ロベルト・ロッセリーニの『潔白』  スチュワーデスに一方的に恋した冴えないアメリカ男。いまならストーカーとでも言われかねないのだが、女の部屋に酔っぱらって押しかけて、当然拒否られ、突き飛ばされひっくり返って気を失ったフリをして、まんまと女にとりいったと思いきや、起き上がった男を介抱するように見せかけて禿げ上がった頭を洗面所でピタピタと水をかけ・・・なんじゃそりゃ、この小編で効いてるのは8mm。これがうまく取り込まれてるのだね。1963年ったら8mmが一般に普及された頃でもあり、8mm映像の中の二重構造に仕立て上げてるあたり、ただのコメディですまさないぞというロッセリーニの心意気ってところ。ラストの女の8mm映像に抱きつく男の滑稽さ、またその映像はピカ1
 2番目がゴダールの『新世界』 一発でゴダールとわかる映像。つまりごくごく日常的な映像が続く。たとえ、パリの上空に原爆が投下されようが、日常的な映像が続き、何ら変わっていかない。開け放たれたままのドアが写される。それが数秒続く。この数秒がとても長い。やっとそのドアの向こうの空間を女がよぎる。どこが『新世界』なんだと、言うてはいけない。『アルマゲドン』見てるわけちゃうんだから。
 落語などで同程度の芸歴の噺家がよって、4人会などというのが催されたときに、たいてい本命は3つ目に出てくる。この『ロゴパグ』でも白眉はパゾリーニの『意志薄弱な男』 あら、ふつーのタイトルなんだねぇ、『ゴルゴダ』じゃないんだ。この『ロゴパグ』が発表されたときに、キリストを冒涜してるとかで、この冒頭の部分にカットが入ったらしいんだけれど、さてボクが見たのはカットされたやつだったのかしら。キリストが処刑されるシーンを撮影中のロケでの話という大枠があって、その監督役にあたってるのが、オーソン・ウェルズというのも効いてる。ここでキリストとともに処刑される大泥棒役に扮するトルネコ(←この名前、出鱈目です)がたまらなくいい。パゾリーニもこのトルネコに思いきり光を当てている。早回しで映されるトルネコが羊の群れをかき分けて走って行くシーンなんて最高よ。これくらいカリカチュアが効いたのがこの30分ほどの短編に収めてしまうのはもったいないくらい。逆に30分ほどでまとめあげてしまうパゾリーニというのはとてつもないということを再認識。
 そして〆はウーゴ・グレゴレッティの『にわとり』 このグレゴレッティだけ知らなかった。前の3つはいわゆる巨匠とでもいうべきそうそうたる名前が並んでるのに、オマケみたいと思っていたらとんでもない。わざと声帯がつぶれていると機械を通して発声させるしかけの経済学者の講演を、典型的4人家族で検証していくという大枠。トッポジージョありーの、ほんと土地も買えない典型的な中流家庭を描きだしている。クルマで家族が購入しようとする土地に向かって走っていくところなんて最高。それに二人の子供がすごくいい。地鶏とブロイラーの違いなどに集約させてしまったら、ごくつまらなくなってしまうところを、テンポのいい歯切れよさで、そんなテーマ以上のものを感じさせてくれた。
RoGoPaG: LA VIAMOCI IL CERVELLO
監督 ロベルト・ロッセリーニ / ジャン・リュック・ゴダール / ピエル・パオロ・パゾリーニ / ウーゴ・グレゴレッティ
出演 ロザンナ・スキャフィーノ / アレクサンドラ・スチュワルト / オーソン・ウェルズ / ウーゴ・トニャッツィ / ラウラ・ベッティ
★★★★★



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2002年10月26日(土)
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