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 ▼ オーソン・ウェルズ『秘められた過去』(1955 仏, スペイン)


 これはとんだ儲けモン。何の前ふりもなくて、ただ図書館の棚にぽこっと残されていたのを、《オーソン・ウェルズ》の名前だけで借りてきた。単にボクの知識のなさ、未熟なのかもしれないけれど、『秘められた過去』なんて聞いたことないよなぁ。借りてきてもしばらくほったらかしにしてた(^_^ゞ 前置きはこれくらいにして... とにかく埋もれているというか、自分の知らなかったところから大アタリを引いた気分ね。
 さて、製作・監督・脚本・衣裳それに主演とオーソン・ウェルズ八面六臂。間違いなく怪物ですね、このおっさん。
 ガイ(ロバート・アーデン)は巻き込まれた殺人事件で殺された男が最期にした「アーカディン」という謎のことばから、アーカディン(オーソン・ウェルズ)に近づいて行き、アーカディンの背後にある闇世界をネタにゆすりにかかる。ナチやムッソリーニさえ一目おいた、なんていうのはかなり眉唾モンだけど、そんなことは気にしないの(笑)
 ところが、逆にガイの過去を調べ上げられてしまい、さらにはアーカディンの過去を調べて欲しいという依頼を受けてしまう。ををーーーっと、このトントン拍子の話の進行、さらには闇世界の大ボスの過去を暴き出す、これは、まさに『市民ケーン』じゃないかぁぁぁ。
 話がびゅんびゅん飛んでいくのね、これってまさにオーソン・ウェルズでないとできない芸当。しかもそこに挿しはさまれる映像が、人間たちが、怪しく極まりない。仮面舞踏会のグロテスクさときたら。ところがそれ一辺倒でなくて、壮大な水道橋屋、城壁、おとぎの城をバックにスケールでかく撮りこんだかと思うと、教授(ミシャ・オウア)の蚤のサーカスだもん。もうたまりませんですよ。この教授、どこか写真屋不器男(寺山修司)の撮ったシルクハットの男に似ていたりして、あ、逆ですね、寺山はこの蚤教授をイメージの下敷きにしたのかもしれない。多分に寺山チックだったりするのは、ガイが古道具屋をたずねて行ったときに、ガイのすぐ背後に人体模型が並立していたりするシーンだとか、カティーナ・パクシヌーの怪しさ(妖しさ)なんて、やっぱり寺山はどこかでこの『秘められた過去』をストックしてたんだろうな。過去を追ううちに出てくる人間がほんと次から次へと怪しいんだもん。たまりません。ミリー(パトリシア・メディナ)の船室の中のシーンも、背景が船の揺れにあわせて揺れている、このリアリズム、見てるほうが酔いそうよ(^_^ゞ アーカディンの過去を知る最後の人物ズーク(エイキム・タミロフ)もね、これにクリスマスの聖しこの夜を重ねてくるところなんて、もう最高だね。
 文句つけるとしたら、意外とガイがまともなことかな。かなりヤバい過去を背負っているというのに、ごくふつーっぽい。もっともこいつまで怪しかったら、ぐちゃぐちゃか、話の道先案内人なんだからね。

サソリ「オレを背中に乗せて川を渡ってくれへんか
カエル「オマエはオレを刺すっからイヤだ
サソリ「そんなことをしたら、オマエが死んでオレも溺れ死ぬだろう
というわけで、カエルはサソリを背中に乗せて川を渡ってやった。ところがやはりカエルは背中にちくりと痛みを感じ、カエルは死に、サソリは溺れ死んだ。
サソリ「(仕方がない、そうしないといられないのがオレの性格なのだから...


CONFIDENTIAL REPORT (Mr Arkadin)
製作・監督・脚本・衣裳 オーソン・ウェルズ
撮影 ジャン・ブールゴワン
音楽 ポール・ミスラキ
出演 オーソン・ウェルズ / マイケル・レッドグレーヴ / カティーナ・パクシヌー / エイキム・タミロフ / ミシャ・オウア / シュザンヌ・フロン / ロバート・アーデン / パオラ・モリ / パトリシア・メディナ / ジャック・ワトリング / グレゴワール・アスラン / ペーター・ヴァン・アイク
★★★★★



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2002年11月10日(日)
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