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 ▼キャロル・リード 『第三の男』 (1949 英)


 いまさらながらの『第三の男』であります。なんもボクが、これはどうだよと書くこともなく、偉ぁ〜い評論家先生たちが口をそろえて絶賛してるわけであります。
 だからというわけでもなくて(笑)、なんかケチのひとつでもつけたろかと思うてもケチのつけようもない、一寸のスキもない完璧な映画なのであります。「見ずに死ねるか!?」(なんやどっかにあったようなコピーだなぁ、と実はコピペしてんだけど) とか言いながら、実は恥ずかしながら、映画館では観たことないのです。すまそm(__)m
 さてどっからベタ褒めしようかなぁと、アリダ・ヴァリのことはおいといて、あ、でもラストはむちゃ好きだなぁ。あの余韻がたまりません。このさりげなさね、ジョセフ・コットンがぽいっとタバコを捨てた瞬間にTHE ENDだもん。最近の映画の情けなさといったら、たまったもんじゃなくて、一から千まで描きつくさないと納得しないなんて、アリダ・ヴァリとジョセフ・コットンがあのあとどうなんのか、観てる側になんというか、残してくれてんだもんネ。
 さてと名前が挙がってくるキャストのことはほっといて、無名のキャストが最高の出来なんですね。まずは子ども。あの子どもには浄瑠璃の黒子のような役割を見いだしてしまうんだよね。なんであんな子どもにあんな表情をさせてあのように動かすことができたのか、もうそれだけでも《絢爛と甦る映画史上ベストワンの名作!》のコピーに恥じないものがあるなぁ。それから頭からブランケットをかぶって、ドイツ語で何やら喚き立てる婆ぁ。それから猫ですよ、猫。ジョセフ・コットンのひもにじゃれついて、そのあとにオーソン・ウェルズの靴ひもにじゃれつく。そして劇的なオーソン・ウェルズの登場シーンに結びつけて行く。その流れの無駄のなさ、完璧に計算された演出は感動もんだよね。そこに演技を計算できない猫を使ってしまうんだもん。風船売りの爺ぃとか、書きだしたらきりがない。それぞれのキャストに存在感があるのに、メインのキャストを食ってしまわないバランスの良さ。脇役のさらに脇役をこれほど効果的に配している映画ってないんとちゃうか。
 爆撃を受けたウィーンの町。このマップもむちゃくちゃに用意周到に作成されているなあと思うのね。広場と路地、それと廃墟、それらが平面に配置されてるのでなくて立体的で、またその立体的配置をストーリーにとりこんでしまってる。そして地下水道だもん。RPGそこのけの配置。さらにそれぞれの意匠がまたすごくて、水飲み場のエンジェルだかの彫像がジョセフ・コットンをじっと見つめ、今にも動き出さん雰囲気よ。
 地下水道でオーソン・ウェルズが追いつめられていくところでの音、あちこちの通路から追いつめる声が響きだしてくる。もちろん映画そのものより有名なアントンカラスの1曲で全てを埋め尽くしてしまえるのもこれまたすごいし。
 観るたびに何らかの発見にわくわくさせられ、名場面にぞくぞくさせられる、ほんとに鳥肌たつ映画なのであります。


THE THIRD MAN
監督 キャロル・リード
製作 キャロル・リード / デヴィッド・O・セルズニック / アレクサンダー・コルダ 
原作・脚本 グレアム・グリーン
撮影 ロバート・クラスカー
音楽 アントン・カラス
出演 ジョセフ・コットン / オーソン・ウェルズ / アリダ・ヴァリ / トレヴァー・ハワード / バーナード・リー / ジェフリー・キーン / エルンスト・ドイッチュ
★★★★★



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2003年01月05日(日)
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