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 ▼ フリッツ・ラング『暗黒街の弾痕』 (1937 米)

 これくらい的外れな邦題ってのもないやね(苦笑) 誰が見たって、ギャングが暗躍してドンバン撃ちまくると思うじゃないの。反対に原題《You Only Live Once》、ん?どこかで聞いたぞと思ったら《You Only Live Twice ― 007は二度死ぬ》なのだった。これは完璧にタイトルのパクリだね。全然話はちがうけど。「一度こっきりしか生きられない」ってところ。
 ささいなことでほとんど冤罪に近い形で入獄させられたエディ(ヘンリー・フォンダ)は、恋人ジョー(シルビア・シドニー)のコネか、有力な弁護士の力によって出所することになる。すぐに二人は結婚。新婚旅行に出かけたけれど、前科者という烙印でホテルを追いだされる。この前科者の烙印はエディにつきまとい、就職してもそのことを元にちょっとしたことで因縁をつけられクビ。ついには銀鉱強盗の現場に居合わせ、たったひとつの証拠だけで容疑者とされてしまう。ここでも前科者という差別意識の上に完璧な冤罪により死刑宣告をされる。
 と、あらすじはこれくらいにしとこ。だって書いてておもしろないもん。けっこうすこすこなように思えてしっかり話が組み立てられているのはさすが。それよりも、ををーーっと思ったの書いとこ。
 まずは刑務所の中でローアングルから刑務所の見張り台を仰ぎ見るカメラ。ここの構図というべきか、視覚効果というのはさすが。新婚旅行のホテルでのカエルね。そのカエルから水面に映った二人。あれはどんなふうに撮ってんだろ。反射をとらえたにしてはシャープすぎるし、まさかこの当時ではめこみというのも。それから銀行強盗のシーン、車の窓のすき間からぎらっと光る犯人の目のすごさ。そして警官たちも含めて群集の扱い、『M』を彷彿させてくれる。それから光と影によって極度にデフォメルメされた独房 ― これぞドイツ表現主義。
 死刑執行直前になっての脱獄シーン。ここはもう息がつまるくらいに濃密なんだよね。刑務所長、人質の医者、そして説得にあたる神父、彼らとエディの心理的な駆け引きは派手なドンパチにとても表現しきれないくらいの緊迫感があるんだよなぁ。ここもその前の独房のシャープな光と影とは対照的に霧を使ったボカシの中に人間像を浮かび上がらせる。あー、もうたまらない。
 そしてエディとジョーの逃避行。この逃避行のシーンではボクはフェリーニの『道』を重ね合わせてしまったんだけど。
 とにかく『暗黒街の弾痕』というタイトルでパスしてたら絶対損をする。まさにYou Only Live Once

You Only Live Once
製作 ウォルター・ウェンジャー
監督 フリッツ・ラング
脚本 ジーン・タウン / C・グラハム・ベイカー
撮影 レオン・シャムロイ
音楽 アルフレッド・ニューマン
出演 ヘンリー・フォンダ / シルビア・シドニー / ウォード・ボンド / ジーン・ディクソン / ウィリアム・ガーガン / バートン・マクレーン / ジェローム・コーワン / マーガレット・ハミルトン / グイン・ウィリアムズ / ジャック・カーソン
★★★★★



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2003年02月25日(火)
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