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 ▼ トラン・アン・ユン『シクロ』 (1995 仏, 香港, ベトナム)


 『青いパパイヤの香り』の印象が鮮烈だったから、とはいうものの、ベトナムでありながらフランスという《ベトナム産フランス映画》などとまで評されるほどにフランス国内でのセットでの撮影というのがどこか物足りなさも感じてた。それを聞こえたか、どうも監督自身もベトナムで撮りたかったようで、この2作目の『シクロ』はベトナム、ホーチミン市でのロケがふんだん、あいかわらずセットはフランスなんだろうけど。とにかくシクロ(輪タク)が、駆け回るのが壮観。
 このトラン・アン・ユン監督にあって、一番ネックになるのが、ベトナム戦争末期にベトナムからフランスに移住したことに尽きるのじゃないだろうか。その監督自身の《おとしまえ》のつけようというのが、『青いパパイヤ〜』以上に見てる側に伝わってくる。詩人(トニー・レオン)からほとばしり出る詩であったり、レ・ヴァン・ロックのどろまみれであったり、また幾度も挿入されるベトナムの子どもたちであったり、はたまた豚の屠殺シーンであったり、とにかく全ての映像がまさに監督自身が自分自身に《おとしまえ》をつけたがってる、そしてそのもどかしさのようなものが見えて来て仕方がない。出てくる人間たち、すべて、そうそうこの人間たちだれ一人として名前をもっていないのだ、その人間たち、姉、お女将も含めて、誰もがトラン・アン・ユン監督自身であり、群像としてこの映画の中で生きている。
 と、いうように書いてくると、これはほんとにすごい映画だと思えるでしょ。ついつい『青い〜』と比較してしまうんだけど、この『シクロ』では、みんながみんな負のベクトルに支配されてしまってること。その分でいうと、ラストに姉(トラン・ヌー・イェン・ケー)が詩人の子どものころの写真をすられてしまうのってすごく意味があると思う。ボクはこうだろうと確信してるんだけど、見て自分で考えてみて。で、あえて、言うと、監督の何がなんでも《おとしまえ》のつけたいのだという気魄に圧倒されて、この平和ボケ日本で、安穏と見てる分にはかなりしんどいものがある。ほんと、すごくいい映画なんだよ。だけど、見てる最中はほんとしんどかった。これでもか、これでもかと押されてくるのに辟易してきたり、妙ないやらしさに見えてきたりだったんだけれど、見終わってから、ずしーんと来るんだよなぁ。
 トニー・レオン、いいです。とくにタバコを斜にくわえるの、ボクも真似したろ(笑) そしてシクロ(レ・ヴァン・ロック)の泥まみれ、ペンキまみれ、トカゲの尻尾にょろ、金魚ぴちょぴちょ、これは真似はしたくないけど(笑)。そして何よりもボクは『青い〜』からのトラン・ヌー・イェン・ケーが好き。彼女となら、トニー・レオン殺されてもいいか(^_^ゞ

CYCLO
製作 マルク・ピトン
監督・脚本 トラン・アン・ユン
撮影 ブノワ・ドゥローム
音楽 トン=ツァ・ティエ 
出演 レ・ヴァン・ロック/ トニー・レオン/ トラン・ヌー・イェン・ケー
★★★★★



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2003年03月05日(水)
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