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 園子温『部屋 / THE ROOM』(1993 日)

 麿の最後のセリフ、そのままあげましょう。
 年老いた殺し屋(麿赤児)が、自分の安息の『部屋』を捜して、不動産屋店員(洞口依子)と共にトウキョウを移動する。ただそれだけ。見る人が見ると、というか、ほとんどの人には到底つまらない、退屈極まりない映画。サ・イ・ア・ク
 フィックス長回し。ほとんどの映像がこれに貫かれている。もうタイトルが出るまでの埠頭の倉庫の絵だけでボクはノックアウトされてしまってた。まったくといっていいほど、舞台のかきわりは動かない。ときにはその中を何かがよぎる。
 もう退屈極まりない象徴のようなのがたぶん中央線の車内の長々とした映像。東京の人ならわかるかも。ふっと《こうえんじ》という駅の表示が見えたし、駅の広告に《USASINO》(Mは画角の外)と読み取れたから。両開きのドアに向かい合って麿と洞口が立っている。そのドアの窓を中央線沿いの景色が流れていく。二駅間まるごと。この場合は、麿と洞口が背景になってしまってるんだよね。アホかいな、そんな誰もが見慣れたものをわざわざ映画にして金とって見せるのかいとおもうけれど、これがおもしろくてたまらん。自分ごとになるんだけれど、これを見るつい、数日前に、神戸に行く用事があって、阪神の梅田から元町までの間、たまたま乗った特急がロマンスシートでもあったので、デジカメを窓に押し付けるようにして、カシャカシャ、シャッターを切ってみた。これが意外とおもしろいのだ。もちろん、他の乗客は、このおっさん何やっとんのだと思うんだろうナ。
 極力に削ぎ落とした都市論。麿、とくれば、特権的肉対論を具現化する役者であるはずなのに、それすら削ぎ落としてしまう。それでもなお怪しい存在を見せてるのだけど。たぶん、何、このおっさん、うぜえ〜、セリフ回しも単調だし退屈(-_-)となるんだろうけどね(苦笑) 園子温による都市論とみると、なんとおもしろいことか。一日目の部屋捜しの最後のところなんて限りなく荒木経惟に近かったりして。ボクはビムヴェンの『東京画』などよりずっと『東京物語』への返答になってると思う。
 ひとつ文句を言うておくと、佐野史郎をひきずっていくところのバックで車が2台走ってしまう。止めてほしかったなぁ。低予算ではそこまで無理ですか。

 
製作 中田貴之 / 安岡卓治 / 松岡亮
監督・脚本 園子温
撮影 大塚雄一郎
美術 脇田政法
音楽 山本公成 / 岡野弘幹
出演 麿赤児 / 洞口依子 / 佐野史郎 / 高橋佐代子
★★★★★



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2003年04月21日(月)
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