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 寺山修司『書を捨てよ町へ出よう』(1971 日)

 これはボクにとっては青春の一里塚のような映画で、ある意味、気恥ずかしかったりする。そうではあってもやっぱり根底に今なおかっこいいと鳥肌たててしまっている自分がいる。
 娼婦みどり(新高恵子)の部屋は、どうも新宿2丁目にあった赤線跡を使っているようだけれど、この当時はまだこんだけ立派に(?)残っていたんだね。最近、赤線跡フリークになってしまったボクにはわくわく。赤線跡の話は本筋じゃなくて、みどりの部屋から英明が逃げ出そうとするときに、ぱっとカーテンを引くとその向こうには、刈り取られたあとの冬の田圃が一面に開ける。これなんか、いま初めて、寺山修司初体験の若い子らにはたまんないだろうな。もちろん星条旗が燃えて、真ん中から破れるとその向こうで、男と女が全裸のからみなんかもかっこいい。かっこいいけど、これなんかはボクは気恥ずかしい。わぁやっちゃったぁ〜って。蛇足ですが、みどりの部屋に上がっていく階段の途中で真っ黒な服に身を包んで顔を見せないで、占ってやるから100円頂戴ってのは浅川マキ。女の子たちがセーラー服をぱっと脱ぎ捨てるところで、コーラスしてるのは浅川マキの『私が娼婦になったなら』。浅川マキ自身が出てくるところのバックでも小さく流れてるのが『眠るのがこわい』。浅川マキフリークだったからねぇ(笑) それから田圃の直後の子どもだった英明を犯そうとする女医は鈴木いづみ。懐かしい。。。そうそう、これまで全然気づかなかったけれど、笑う会の直後にカットで挿入される写真は森山大道。『健さん愛してる』のときに挿入されるカットも森山大道。何かこうちょっと書き並べてみただけで、いまのボクがいかに寺山修司を起点にしてるかというのがわかってしまうな(^_^ゞ そこらをつきつめてくると、ボクがこの映画で一番好きなシーンはラスト近くで英明がひとり都電の線路を歩いているところ。ある意味、僕自身の心象風景だったりする。
 もちろん映画文法を打ち破ろうとする試みに関しては、どこかで読んで(笑) 当時のボクには《唐十郎》と《寺山修司》という2枚の金看板があって、結局ボクは《唐十郎》のほうに走ってしまったけれど、とにかくそれまであった既成の映画、新劇からいかに抜け出す、打破するかという大きなテーマがあったんだよね。それはそれでおもしろかったし、いまも面白いけれど、寺山が真っ向から立ち向かったもの、故郷=母というテーマは、いまでもがつぅーんと矢吹ジョーのトリプルクロスを喰らわされたような衝撃となって
コカコーラの瓶に入れて育てていたら、だんだん大きくなって出られなくなっちまった。コカコーラの瓶のトカゲ。おまえにゃ、便を割って出てくる力なんてあるまい、そうだろう?日本海峡にしぶく屈辱の繰り返し、身を捨てるに値するだろうか、祖国よ



製作 寺山修司 / 九條映子
監督・脚本・原作 寺山修司
撮影 鋤田正義 仙元誠三
音楽 下田逸郎 / J・A・シーザー / 柳田博義
美術 林静一 / 榎本了壱
録音 大橋鉄矢
照明 水村富夫
編集 浦岡敬一
出演 佐々木英明 / 平泉征 / 斎藤正治 / 丸山明宏 / 新高恵子 / 浅川マキ / 鈴木いづみ / 川村郁 / クニ河内 / 蘭妖子 / 天井桟敷 / 東京キッド・ブラザーズ
★★★★★



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2003年04月27日(日)
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