nikki-site 雑文速報
 あいうえお順INDEX 



 相米慎二『ラブホテル』(1985 日)

 あのぉー、こんなに切なく流されてしまっていいんだろうかって、まだ動揺してる。あゝ、やばい、やばい。これ、ほぼリアルタイムで見てるんだよな。う〜んと、確か、そのときにはこのような動揺させられるってことなかったんだけれど、いま感じている動揺っていったい何なんだいと思ってしまう。デジャビュでもなくて、その反対、確か自分史の中にこのようなシーンがあったような。このタクシー運転手村木(寺田農)と同じようなことをしたかっていうと、全然そうでないのに、どこかに思いきり自分を見てしまう。
 えーっとですね、冷静に分析してみると、これをリアルタイムに見たころというのは、微分係数がまだ十分に正の値をとっていて、極大になる以前だった、が、いま微分係数は負の値をとっているということは、自分では否定はしてもしきれない。何を難しいこと言うとんねん。平たく言えば、峠を越したな。決して峠を越したということはマイナス志向なわけでもなくて、こればっかりは仕方がない。その反面、この『ラブホテル』にひどく動揺してしまえるという、よく言えば、自分の中でまた感性が育ったと、思うのです。吉行淳之介にいかれてしまうのも同じなんだけどな。
 港の突堤の上で、イヤリングをさがしているところなんか、もう涙出てきてしまう。ついこないだもまごまご日記のほうで、ボク自身はナルシストだということを書いたのだけれど、突堤の先のコンクリートの台を飛び移る名美(速水典子)と同じ場所にいる、いたという自分が可愛くてたまらない。そこんところのもんたよしのりの「赤いアンブレラ」の枯れた声がきっちり輪をかけてきてね。思うに、そういうのに感じないでおこうと、流されないでおこうと必死にこれまでやってきたのに、いまどっと押し流される自分自身がまた可愛くてしかたがない。百恵の「夜へ」なんですよ。20年も前の音が鮮やかに揺さぶりをかけてくる。
 ラストのみごとさときたら、もうたまったもんじゃない。


 
監督 相米慎二
脚本 石井隆
撮影 篠田昇
美術 寒竹恒雄
出演 速水典子 / 寺田農 / 中川梨絵 / 志水季里子 / 益富信孝 / 尾美としのり / 佐藤浩市
★★★★★



↑投票ボタン



2003年07月05日(土)
 ≪   ≫   NEW   INDEX   アイウエオ順INDEX   MAIL   HOME 


エンピツ投票ボタン↑
My追加