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■ フランソワ・オゾン『まぼろし』(2001 仏) ★★★★★
『焼け石に水』ではいまひとつ肌に合わなくて、『8人の女たち』では、なんだオールスター豪華キャストなだけじゃんと、ボクの中ではオゾン監督というのはようわからんのよ。だからこれもあまり期待してなかった。だいたい『まぼろし』なんてタイトルもずぶずぶの渡辺淳一っぽくてねとぉーっとしたいやらしさ感じないか。原題は『Sous le sable』で「砂の下」ほんとどこでどうなってこんな邦題つけるんだか。まぁ、ワタナベジュンイチックに見てしまう人もおるだろうけど... さて、この映画の見どころというか、最大の売りは、あのシャーロット・ランプリング。「あの」とつけてもわからんだろうけれど、『愛の嵐』で、♪〜それでも昔が懐かしい。。。と歌うルチアが帰ってきた。『愛の嵐』から30年か。もちろんこの間、逼塞してたわけじゃないけど、シャーロットをメインにどんと据えた映画となると、やっぱり『愛の嵐』以来って感がある。これはたぶん若い人たちにはわからないかもしれないが、年をとるってことはいいことだと、彼女を見ているとしみじみ思ってしまう。1946年生まれだから、この『まぼろし』で55歳。いい女はいくつになってもいい女。ほんと昔の恋人にふっと出会ったようなときめきを感じてしまう。ほんとに『愛の嵐』のシャーロットにぞっこんだったから、余計そうね。 おばはんのハダカなんて見てもねぇ〜〜などとほざくガキんちょがいたら、ぶっ殺してやる。 肝心の『まぼろし』そのもののほうに参りますが、これってねぇ、ボク自身、正直言って50越えてんだよね。そして50を越えてから見てよかったとつくづく思う。もし10年前、20年前なんかに見てたら、なんじゃい、こりゃ、たかが旦那が突然死んだから、自殺したかもしれないってうじうじしやがって、ああ女っていやだねぇ、なんて思ったに違いない。あ、でもその女を演じてるのがシャーロット・ランプリングである以上、そのような女を演じてみせるわけがないか。もし仮にだぞ、30年後にペネロペ・クルスが演じたとしたら、そうかもな(苦笑) ブリュノ・クレメールとシャーロット・ランプリング、この組み合わせが絶妙。クランクインしたときには、シナリオははじめの一幕だけしかできてなかったらしくて、その後は撮影しながら書き下ろして行ったらしいが、この二人がつくり出す夫婦像があってこそ、成り立ったと言ってもいいでしょう。ジャック・ノロはすっかりピエロになってしまってお気の毒だけれど、この二人があってこそ創りだされた映画なんだから諦めてもらいましょう。 そしてこの二人を起用した慧眼と、この二人にすっかり任せてしまえるオゾン監督の手腕に拍手。
蛇足ですが、ゑつと思うシーン。それは薪を拾って歩くブリュノ・クレメールが松の木の向こう側を通るところで、カメラはいきなり手前の松の木にピントがあってしまう。くっきりと松の木の樹皮が映し出される。やっぱり、そのゑっと思うカメラに、なんでだ?おっかしいやないかとよく言われるらしい。ところがそのことについてオゾン監督は「ボクは木が好きだから」 あー、これ、わかるんだなぁ。いちおう念のためにブリュノのほうにピントを合わせたままのテイクもあるらしいが、編集では松の木にピントが移ってしまうほうを採用した。絶対このほうが正解だよ。別テイクだったらふつうすぎるっしょ。
Sous le sable 製作 オリヴィエ・デルボスク / マルク・ミソニエ 監督 フランソワ・オゾン 脚本 フランソワ・オゾン / エマニュエル・バーンハイム / マリナ・ドゥ・ヴァン / マルシア・ロマーノ 撮影 アントワーヌ・エベルレ / ジャンヌ・ラポワリー 音楽 フィリップ・ロンビ 出演 シャーロット・ランプリング / ブリュノ・クレメール / ジャック・ノロ / アレクサンドラ・スチュワルト / ピエール・ヴェルニエ / アンドレ・タンジー
2003年10月03日(金)
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