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 北野武『Dolls ドールズ』 (2002 日) ★★★★

 たけし版・道行ってね、そりゃそうでしょ、最初のくだりが本物の文楽『冥途の飛脚』、さぁ、オイらの道行やってのけるぞぉーって意気込みなんでしょね。
 なんかですね、劇場封切りの時には、今度のたけしは違うというふうにアナウンスされてたらしいけれど、ボクはそう熱心なたけしの映画のファンというわけでなくて、比較するにも比較できないんだけどな。とにかく見てみたら、どう違うんだか、ようわからん。静かってことですか?ドンパチがないってことくらいじゃねえの(←たけし風に)。
 リアリティー、猥雑感に欠けてますよねぇ、って、あ、それが、この『Dolls ドールズ』で違うと言われるところですか。。。。
 さてと、メインは菅野美穂と西島秀俊の道行。これは理由はなんであれ、まさに現代の道行で、この映画の50%以上がここに注がれているのは当然でしょう。サブとなる、三橋達也と松原智恵子、深田恭子と武重勉の2話。これって必要なの?とくに深田恭子のほうね。あまりに陳腐すぎんじゃないのっつうの。んなこと書くと、深田恭子ファンに刺されそうだけれど、B級のコミックじゃないんだからさ、アイドルが交通事故で元アイドルに成り果ててしまった、そしてそれを追っかけるファン。。。なんてさぁ、こんなシナリオを書いてもってったところで、誰が拾ってくれる? なんで、こんなつまんないのをくっつけてしまったんだろうね。それもメインとはほとんど何の脈絡もなくて、2時間の劇場映画にするにはメインだけでは寸足らずだったのか。理解に苦しむ。というか、そこはたけしのギャグだよって片づけりゃいいんだけどね。なんか、アホくさです。
 もうひとつの三橋達也の話にしても、深田恭子の話に比べればまだしも、が、古き日活っぽいよなぁ。そういう意味でもギャグなんですけどね、というか、ギャグにしかなってない。そこは三橋達也と松原智恵子のキャリアの差でまだしも見てられるんだけれど。それにしたって、安っぽいシナリオだワ。
 あ、もう、けちょんけちょんですが、メインの菅野美穂と西島秀俊の道行、これはいいねぇ。まず二人の間にセリフらしきものはほとんどない。シナリオとしてはなんにもなくて、ひたすら道行を続けるばかりで、それがいい。そのシナリオらしきものがないために、あえて2本のサブのシナリオをくっつけたのかもしれないけれど、必要ないじゃん。道行、道行。。。それだけでロマンでしょ。見る側が、そんなことさえくみ取れないからって。。。。なんでつっぱねてしまわないのかなぁ。ここらあたりのたけしの真意はわからん。誰も食わないようなくさぁーい芝居を作ってみたかった。まじにギャグ、やってみたかった。と、いうくらいにしかとりようがないネ。あ、まだメインの話に入ってないな。
 リアリティー、猥雑感に欠けるとはじめに書いたんだけれど、それは例えば、現実に一年間も歩き続けれるはずがないじゃないか、なんてアフォなことを言うてるのでなくて、「四季を描きたかった」というたけしの意図することはようわかる。その上でリアリティがない、というのは、四季を描こうとするあまりに、それが完全に作り物の世界に陥ってないかという疑問。思うに、たけしの描こうとした世界はあまりに叙情的すぎやしないか。作られすぎてるというのが目につく。そういう意味で、今度のたけしの映画はこれまでと違うと言われても『HANABI』と全然変わってないじゃないか、と思うのですね。ただここで巧妙なトリックが仕掛けられている。と、いうのは、浄瑠璃の世界をぽんと提示してしまってること。だから必要以上にリアリティーや猥雑感を排除してしまっている。あえて浮遊してしまった世界を描き出すこと、切り取られた世界だけを描き出すこと。そうした狙いの中に、先にけちょんけちょんに酷評したサブのシナリオも収斂させてしまう。そのトリックの鮮やかなこと。たけしはヨージの衣装で腹をくくったなんていうてるらしいけど、確信犯だよ。
 ボク的には菅野美穂のぎくしゃくした歩き方が超気に入ってます。


プロデューサー 森昌行 / 吉田多喜男
監督・脚本 北野武
撮影 柳島克己
美術 磯田典宏
衣裳 山本耀司
編集 北野武 / 太田義則
音楽 久石譲
出演 菅野美穂 / 西島秀俊 / 三橋達也 / 松原智恵子 / 深田恭子 / 武重勉 / 岸本加世子 / 大森南朋 / 大杉漣 / ホーキング青山

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2003年10月31日(金)
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