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 ピエル・パオロ・パゾリーニ『アポロンの地獄』 (1967 伊) ★★★★★

 これ、30数年前に初めて見て、ショックを受けたというか、このロケ地に使われたイエメン(?)だか、たぶん中近東の荒涼たる風景に魅せられてしまって、風景とはかくあるものだと植え込まれてしまった。で、ありながらも、それを現実に目の当たりにしたことはいまだかつてないねんけどな。
 誰もが知ってる(はずないか)、いわゆるオイディプス・コンプレックスの元となったギリシャ悲劇の『オイディプス王』が下敷き、というよりかなり忠実な再現。なんて言うてますが、これを見た当時に《オイディプス・コンプレックス》ということばが結構ちまたで囁かれていて、これはひとつ原典を読んどかなアカンと思いつつ挫折。根性なしです。
 さてと、見たらわかるように、ギリシャ悲劇なわけですが、どこがギリシャやねん(-.-;)というわけです。先にも書いたように、そっくり中近東らしきところにきっちり引っ越してしまってるわけ。中近東の遊牧民の部族の王として、オイディプス王持ち込まれている。なんでも、ギリシャ悲劇の信奉者からは、設定がむちゃくちゃであるとか非難されていたらしいが、70年当時、ボクのまわりでは、そんなことより、パゾリーニというすごいのがいる。今度の『アポロンの地獄』はマストだよなんて言われていて、それは見やんなアカンよなぁって。。。まだ可愛かったでしょ(笑)
 オイディプスの話自体は、ギリシャ悲劇のなかでも最もよくできた話だし、だから最もよく知られているわけで、そのストーリー性でパゾリーニがどうこうと言えるわけじゃないけれど、ずこーんと中近東に持っていったこと、ポリスを部族に置き換えたり、それとこれもたしか当時ちまたで囁かれつつあったシャーマニズム、とても日本の雅楽っぽい笛の音であるとか、パゾリーニ自身のイメージの融合。それまでギリシャ悲劇となると、いかに忠実に再演(再現)できるかということにかかっていたにも関わらず、確信犯的にパゾリーニ自身が思い描いた世界を構築してしまった。そのことにつきるでしょ。まさにこれこそがオイディプス王の物語だと、ボク的にはいまだに、この『アポロンの地獄』がオイディプス王の物語だと思い込んでいるもの。
 それから、イエメン・ネオレアリズモ(笑)なんすかねぇ。あの群集は。ロケ現地で集めたんでしょ。あ、それだけでネオレアリズモってわけじゃないか(^_^ゞ それよりもベンハー顔負けの一大スペクタル巨篇でしょ。ボクはベンハーの風景には憧れへんかったけれど。
 でね、間のメインのことばっかり書いてるけれど、プロローグ、エピローグつきで、これがオイディプス王の物語、それ以前、その後という形をなしていて、時代をわざとずらせてある。その時代のずらし方というのにも意味があるとか、だけれど、ボクにはそこまでよう見てとられへんです。
 ともかくも、中近東の荒涼たる風景そのもの、そしてこの物語、映画そのものがボクの原風景になったといってもいいと思ってる。
 あ、そだそだ、ピーターの『薔薇の葬列』もこのオイディプスだったのだ。

EDIPO RE
監督・脚本 ピエル・パオロ・パゾリーニ
撮影 ジュゼッペ・ルッツォリーニ
美術 ルイジ・スカッチャノーチェ
衣装 ダニーロ・ドナーティ
出演 フランコ・チッティ / シルヴァーナ・マンガーノ / アリダ・ヴァリ / ラウラ・ベッティ

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2003年11月04日(火)
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