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 ベルナルド・ベルトルッチ『ラストタンゴ・イン・パリ』 (1972 仏, 伊) ★★★★

 あら、これってもう30年前だったのだ。てっきり80ねんだいになってからだったと思っていた。なんかこの当時はもっと泥臭いのや、どろどろっとしたのばっかり見てた記憶がある。確かに、今の時代からすれば、どろどろして見えるんだけれど、『ラストタンゴ・イン・パリ』というタイトルから受ける印象や、マーロン・ブランドとマリア・シュナイダーが裸で向きあっているスチールから、ずっとスノッブな感じがして、その当時は避けていたんだと思う。時代の流れは、この『ラストタンゴ〜』を通り越してよりスノッブになったという気がするけどね。だから、72年じゃなくて82年じゃなかったのか、なんてボクの勘違いは、ちょうど82年くらいに一致してるから。あくまでボクの印象だけれど。
 確かに、この72年頃には、性描写の烈しさで、イタリアだったかで4,5日で上映禁止になったなんてことが喧伝され、その一方で映像がきれいでおしゃれだというようにプロモートされてた。だからパスしたんだけどな。余談だけど、ボクの父親が見に行って、なんかようわからん、あんまりおもしろなかった、なんて言うてたような微かな記憶がある。
 なんか前置きがみたいなんが長くなったけれど、この映画ってマーロン・ブランドに尽きるよなぁって思う。こういうの演じさせても風格ってものが感じられる。『ゴッドファーザー』か『波止場』なんだろうけれど、別の意味で、『ラストタンゴ・〜』を代表作にしてもいいと思う。
 allcinema onlineのコメントで「渡辺淳一的中年男」と評されていたけれど、マーロン・ブランド、そしてベルトルッチの名誉のために否定しておいてやるよ。敢えて、喩えるならば、吉行淳之介の描く男だね。吉行の描く男ほど、どろどろとはしていないけれど、吉行の『暗室』のような、いや、あそこまで暗くはないか。暗さをあえて韜晦してみせようとするペーソスってものがある。これはベルトリッチの演出によるのか、マーロン・ブランドの即興によるのか、わからないが、ラストでベランダのフェンスの裏にチューインガムをくっつけるだろ、それに尽きるんだよなぁ。
 ただ、ベルトリッチの場合にいつも気になるのは、作りすぎるってこと。ジャン=ピエール・レオの映画撮影のシーンってのは愛嬌があっていいんだよ。だけど、ラストタンゴだってそうだし、あの二人の部屋の中のシーンでの照明、その照明によって作りだされる影。確かに、あおの部屋の中での、マリア・シュナイダーとの二人を映しだす映像は美しい。だけれども、あそこまで美しく描いてしまっていいのか。語らせることばに比して、そうじゃないだろうって気がして仕方がない。

ULTIMO TANGO A PARIGI
監督 ベルナルド・ベルトルッチ
製作 アルベルト・グリマルディ
脚本 ベルナルド・ベルトルッチ / フランコ・アルカッリ
撮影 ヴィットリオ・ストラーロ
音楽 ガトー・バルビエリ
出演 マーロン・ブランド / マリア・シュナイダー / ジャン=ピエール・レオ / マッシモ・ジロッティ / カトリーヌ・アレグレ / ラウラ・ベッティ

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2003年11月25日(火)
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