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 デビッド・リンチ『ブルーベルベット』 (1986 米) ★★★★☆

 ありきたりごく平穏な日常からどーんと別・世界へ入り込んでいく。いつでも別・世界(異界といってもいいか)が口を開けて待ってるぞというのが、ひとつのリンチが描き出す典型。リンチというとどうしても、その異常性から、別・世界のほうに目が行ってしまうんだけれど、その平穏な日常だけとらえて見てみるのもおもしろい。まぁ、ボクがこんなことを言い出さなくても、誰かがきっと言うてんだろうけれど。
 それで言うと、ブルーベルベットをバックにした暗い気怠いブルーベルベットのタイトルが終わった瞬間に、真っ青な青空、真っ白な垣根、そして真っ赤なバラ、これらの色の鮮烈なことよ。それだけで、なんか不穏なことが始まるぞというお約束のような不謹慎な期待感にわくわく。親父がもうのどかとしか言いようのない水まきしているホースが捩じれてはじまり、はじまり。あゝ、人の不幸を楽しみに待つなんて。
 で、ジェフリー(カイル・マクラクラン)、そう『ツイン・ピークス』ですっかりお馴染み、って『ブルーベルベット』のほうが製作は先なんですが、やっぱり不穏の始まりにはこの顔ありき。何遍見ても、この顔はあぶなげでいい。そして、ジェフリーの家に住んでいる叔母二人。これがとんでもなく吐き気が出そうなくらいのヤンキー中高年。こうなると、記号だね。ずんずらずらずらと記号を並べ立てれば立てるほど、別・世界への期待は膨らむ。刑事(ジョージ・ディッカーソン)なんて家庭の中でもホルダーつけてんだな、笑える。細かい指摘をすると、例えばラストで刑事が突入するときに、なんで娘を連れてくんだなんて、もうこの際そんな些細なことにこだわんなよって、ドラマツルギーの必然ですか?
 さて、その刑事の娘サンディー(ローラ・ダーン)ですが、このローラ・ダーンの顔ってのが、どうしても生理的に好きになれない。この映画の中でもそうだけど、クルマでおデートっていう超バカヤンキー娘の典型って顔で、だからこそ、リンチは起用してるんだろうけれど、『ワイルド・アット・ハート』なんかでは、このローラ・ダーンが出てくるたびにむかついておった。あくまでボクの個人的趣味ですが(^_^ゞ この『ブルー〜』ではジェフリーを、格段に上の女にとられるという役回りで、その女との修羅場での、ローラの顔は素敵だった。もっと泣けぃ!って、ボクってサディスト。だってほんとローラのような女は嫌いなんだもん、生理的に受け付けないんだもん。
 はい、お待たせ。その格段上の女がイザベラ・ロッセリーニ。この女なくして、この『ブルーベルベット』は存在しなかった。とっておきの話なんだけど、デニス・ホッパーとのからみのシーンで、まぬけのジェフリー君はクローゼットの中、椅子にすわってデニス・ホッパーに脚をひろげて見せるシーンってございましたでしょう。「ママー」ってデニス・ホッパーが異常ぶりをいかんなく発揮するとこです。そのシーンの撮影にあたって、後ろ向きなので下は着けていてもよかったんだけれど、下着の腺が出るからと、イザベラ自らノーパンで挑んだのです。撮影中、デニス・ホッパーひとりがイザベラの割れ目を至近距離で拝観したそうです。をー、この話だけで、もうえっちくさぁーい、た、たらまん。それが全編貫いているというても過言じゃないです。イザベラにノックダウン
 そしてデニス・ホッパー。この異常ぶりときたら、『イージー・ライダー』でFuck Youと中指を突き立て、この『ブルーベルベット』ではLet's Fuck!と叫ぶ。なんてこの男にFuckという言葉が似合うのだろう。実のところ、この撮影の直前まで、酒とドラッグでリハビリ中だったとか。リハビリ明けたとたんに、これだもん、凄すぎる。地のままやんけ。
 あ、その他、鏤められたリンチワールドの記号は自分で楽しんでな、消防車とか。話の筋なんてどうでもいいから(笑)

Blue Velvet
製作総指揮 リチャード・ロス
製作 フレッド・カルーソ
監督・脚本 デビッド・リンチ
撮影 フレデリック・エルムズ
音楽 アンジェロ・バダラメンティ
出演 カイル・マクラクラン / イザベラ・ロッセリーニ / デニス・ホッパー / ローラ・ダーン / ホープ・ラング / プリシラ・ポインター / ディーン・ストックウェル / ジョージ・ディッカーソン / ブラッド・ダーリフ / ジャック・ナンス

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2003年12月14日(日)
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