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■ ロマン・ポランスキー『戦場のピアニスト』 (2002 英, 独, 仏, ポーランド) ★★★
おすぎが声を裏返して、「んっもぉ〜、すんごく感動しましたぁ。生きるというのはこういうことなのね!」 なんてほざいてるのをテレビだかで見たりしたら、この映画は決して映画館には見にかないでおこうと堅く決心したのだ。ひねくれもの。 この映画に限らず、ナチスドイツのしたことというのに対して、ボクなんか全く想像できないくらいの根の深さがあるんだろうな。それに比べれば、ヒロシマ・ナガサキに対する能天気なことよ。それはそれとして、ポランスキー監督自身が母親を収容所で亡くしているという事実。これは横においとくわけにはいかないでしょ。 が、しかし、見る側にとって、そうした監督の事情を知った上で見ないといけないもんなのか。当然のことながら、その答えはノーで、そのことは監督自身がもっともよく心得ていることだと思うね。そうして、ナチスに対する憎しみをいくら描いたところで、母親の鎮魂となるなんてことも全く考えてないでしょう。そんな個人的なレベルで留まってるなら、こうした世界的な映画監督になりえるはずがない。 それでも彼が描き出さないと気が済まなかったのは何だったのか。自分自身へのオトシマエ以外に考えようがないじゃないですか。この映画を創りだすことによって、観客を楽しませようとか、感動させようなどということは、最初から一切はねのけてしまってた。そういうふうにボク自身が受け取らないと納得できないのね。全然、感動も何もしなかったモン。いったい、何なの、これ?という程度にしか感じられない。どこへも、シュピルマン(エイドリアン・ブロディ)へも、自分を投影できなければ、想像すらできない。もちろん、痛みなど感じなければ、喜びも見いだせない。 『タイタニック』のときだったか、その中で死ぬ人間の数が多ければ多いほど、よりヒューマニズムが際立つものだ、ということをどこかで読んだことがある。上にも書いたように、ポランスキー監督は見る側になんら感動を与えようなどと考えてないのだから(少なくともボクにはそう見える)、そうしたあざとさなんかないのだけれど、あまりに簡単に人が殺されるのを、これでもか、これでもかと見せられると、うんざりしてくるというもの。 まぁ、こんなふうに見る側を拒絶する、少なくともボクは拒絶されていると感じた、そのような映画があってもいいじゃないか。とてもじゃないけど、シュピルマンの行き方云々ということに考えさせられるということはなかったね。
The Pianist 製作総指揮 ティモシー・バーリル / ルー・ライウィン / ヘニング・モルフェンター 製作 ロベール・ベンムッサ / ロマン・ポランスキー / アラン・サルド 監督 ロマン・ポランスキー 脚本 ロナルド・ハーウッド / ロマン・ポランスキー 原作 ウワディスワフ・シュピルマン 撮影 パーベル・エデルマン 美術 アラン・スタースキ 音楽 ボイチェフ・キラール 衣装 アンナ・B・シェパード 出演 エイドリアン・ブロディ / エミリア・フォックス / ジュリア・レイナー / トーマス・クレッチマン / フランク・フィンレイ
2003年12月15日(月)
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