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■ アンドレ・テシネ『深夜カフェのピエール』 (1991 仏, 伊) ★★★★
この邦題、なんとかならん? 原題は"J'EMBRASSE PAS" <キスはしないよ>って意味です。つまり、風俗なんかで、本番ありでもキスはNGってときに言うことばが"J'EMBRASSE PAS" これねぇ、見ながら、どことなく日活ロマンポルノの文芸路線と重ねて見てた。こんなのがあったかというと、ないんですけど。俳優になるのを夢に見て、パリに飛びだしてきたピエール(マニュエル・ブラン)の挫折というか、ありがちなパターンで風俗に入り込んでしまう。もちろんピエールってのは男の子ですから、男の子が風俗へとなると、つまり男娼になるってことですね。さすがゲイカルチャー先進国なのです。もちろん、女が風俗で稼ぐってのは許せても、男が身を売って金を稼ぐのは許せん!なんて、野暮は言うてませんです。この映画でも男だからっていう違和感はまったくないね。別に売春を肯定してるわけでもなく、否定してるわけでもなく、単なるひとつの過程として描かれているだけ。 パリに出て、それからゲイの父親くらいのロマン(フィリップ・ノワレ)に「君を知りたい」と迫られたり、「お袋と同じ45歳くらい」の女エヴリーヌ(エレーヌ・ヴァンサン)の若いツバメ、これって逆援交だね、になりかけたところで逃げ出してロマンの元に走る。そこからもやっぱり逃げ出して、ついに街に立つ男となる。そこで出会った娼婦イングリッド(エマニュエル・ベアール)と、やっと自分自身の性愛に目覚めるけれど、イングリッドはヒモつき。このあたりの恋愛とその影ってのが、やたら日活ロマンポルノ文芸路線っぽかったりするのです。 思うにアンドレ・テシネ監督の描き出す絵ってのも、日活ロマンポルノ文芸路線っぽかったりする。トーンが急激に暗かったりするんだよね。とくに夜のシーンなどは必要以上の照明を使わないことで、よりリアルさを出そうとしている。気分的に重くひきずるような暗さじゃないです。あー、でも夜のシーン多いな、セーヌにかかった橋を渡っていくとかね。 ところで、いま森瑶子の『カナの結婚』という小説を読んでるんだけれど、主人公のカナが自分にはじめて向きあってこそ得られるものができたというのとどことなく重なるようでおもしろかった。その中でも「お袋とおなじくらい」の女と俳優になりたい美男の関係ってのもでてくる。それがメインじゃないけどね。
J'EMBRASSE PAS 製作総指揮 アラン・サントンズ 製作 モーリス・ベルナール / ジャン・エリック・ストロス 監督 アンドレ・テシネ 脚本 アンドレ・テシネ / ジャック・ノロ 撮影 ティエリー・アルボガスト 音楽 フィリップ・サルド 出演 マニュエル・ブラン / エマニュエル・ベアール / フィリップ・ノワレ / エレーヌ・ヴァンサン
2003年12月18日(木)
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