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 スタンリー・キューブリック『時計じかけのオレンジ』 (1971 英) ★★★★★

 いまさらながらの『時計じかけのオレンジ』なのですが、こればっかりは何べん見てもおもしろい。まともに筋なんてのはどうでもよくて、キッチュ、ポップな映画というと、ブライアン・デ・パルマの『ファントム・オブ・パラダイス』と双璧をなすんじゃないか。ボクは断然、こっちのほうが好きだけどな。
 《レイプ・超暴力》ってか、その《レイプ・超暴力》を妙ちきりんなモラルで断罪しようとするどこぞの履いて捨てるようなのキモいのでなくて、もちろん肯定してるわけでもなくて、血がどばっびゅっっと飛び散るなんてのも全くないわけ。
 なんてったらいいのかなぁ、人間の根底的に潜む《レイプ・超暴力》...なんて言ったらたいそうだしなぁ。意外とボクらは、いくら否定的であっても、映画の中で《レイプ・超暴力》を楽しんでしまってるんだよねぇ。ただそれがリアルであったらあっただけ、吐き気を催すとか、アレックスに仕組まれた回路をあらかじめもってたりする。逆にリアルでなかったら、見向きもしようとしない。そんな気まぐれな見る側をうならせようと、最近ではCGばりばりに駆使するんだけれど、ボクなんかは鼻白むばかり。アホくさ。。。。
 じゃ、この『時計じかけ〜』はリアルなのかというと、ちっともリアルじゃないです。よく言われる迫真の演技なんてものじゃなくて、どこかに抜けをつくりだしている。用意してある。
 例えば、アレックス(マルコム・マクダウェル)が、シャバに戻ってきて、元の仲間の警官にやられるってところ、あそこで、ふつうなら、どすっ、がすっ、ぐわっって、まるで劇画チックな効果音を、よりリアルに見せるためにかぶせるとこなんだけど、そうした効果音のかわりにバックの音楽の電子音にシンクロさせてしまってる。
 アレックスの猫女殺人のシーンも見事だ。猫女の登場のさせ方がいい。キューブリック・シンメトリーです。何と言っても瞬間12匹猫がいるってのがいい。凶器になる「芸術品」がぁぁ、それでがすっとね、その瞬間の・・・・・
 その凶器でいくと、最初のコロバ・ミルクバーにはのけぞるしね、あ、タイトルロールからしていいんだけど、マルコム・マクダウェルのどアップ。この人、どアップがすごくいい、右目だけくりんくりんのつけまつげでね、左はまつげ全部抜いてんのじゃないだろか。そんなドルーグ悪たれみんなでミルクってのが素敵。そのミルクを注ぐ機械ってのも。
 《HOME》のインテリアなんかすごくいいじゃん。そしてあのチャイム音ね。《HOME》は前後2回出てくるんだけど、この2つのギャップもいいの。もう少しマッチョでもいいんだけど。そして、その主人が、アレックスに報復するときの顔ったらねぇ、ここにも上で書いた抜きがあるんだよねぇ。そして、そしてあの、"雨に唄えば"のレイプシーンってのは、映画史上ナンバー1のレイプシーンだ、なんてはっきり言い切っておきます。
きっちりヒトラーも出てくるしって、でもあれはどっちかというと、チャップリン『独裁者』だね。書き始めたらキリがないから、もうやめちょこ。

 ところで字幕でアンダーラインが付されているのはナッドサット(teenage)用語と呼ばれるらしく、この映画というか、原作で用いられていた、主にロシア語からの転移。これについてはhttp://www.geocities.co.jp/WallStreet/2973/cw21/nadsat.htmlに詳しい。また原作は21章から成っていたのだが。。。それについてもhttp://www.geocities.co.jp/WallStreet/2973/cw21/cw21j.htmlを参照。このキューブリックの映画は20章まで。

Clockwork Orange
製作・監督・脚本 スタンリー・キューブリック
原作 アンソニー・バージェス
撮影 ジョン・オルコット
音楽 ウォルター・カーロス
出演 マルコム・マクダウェル / パトリック・マギー / エイドリアン・コリ / オーブリー・スミス / マイケル・ベイツ バーンズ / スティーヴン・バーコフ

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2003年12月21日(日)
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