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 サラ・ムーン『ミシシッピー・ワン』 (1991 仏) ★★★★★

 去年(03)の夏にヨーロッパを旅行したとき、ちょうどパリのヨーロッパ写真美術館でサラ・ムーン展が開かれていた。出品されていた作品は、それまでに何らかの形で目にしていたものでなくて、まったく新しい作品だった。同時に小さな部屋でサラ・ムーンの映像も上映されていた。一瞬『ミシシッピー・ワン』かと期待したけれど、何というタイトルかも覚えてないし、もちろんフランス語だからね、ただ映像を眺めているだけ。
 この『ミシシッピー・ワン』が日本で公開されたのは10年ちょっと前。当然のことながら無精モンのボク(←開き直ってどうする)はそんなのが公開されているなどの情報もえず、それから何年か経ってふっと目にしたスタジオボイスだかの雑誌で、こんな映画があるというのを知った人。それからさがしたやんか。でもこんなカルトなの見つかるわけがない。やっとヤフオクにかかっても20000円じゃ、辛すぎる。それがやっぱり人間エエ行いをしとくもんですねぇ。1ヶ月ほど前にいつも行くレンタルビデオ屋の中古ビデオに、な、なんと980円!! わは、長々と自慢してやった(笑) こうしてやっとのことで見れたのだよ(嬉)

 物語的には非常に単純。ある精神病を患った男デビッド(デヴィッド・ロウ)が少女アレクサンドラ(アレクサンドラ・カピュアノ)を誘拐する。あら、映画の中の名前は実名なんだ。その男がアレックスを誘拐する。この誘拐するときのセリフがいいよなぁ。
「なんで足ばかり見てる?」
「見てるのは新しい靴よ」
 いとも簡単に誘拐してしまって、さてここから二人の「旅」が始まる。実はこの男、宮崎勤クンではなくて、死んだとされている実の父親なんだが、そのことはちらっとしか明かされない。それよりもむしろ、Bunkamura | ル・シネマのコピーに《この旅は男にとっては逃避行、 少女にとっては冒険だった。》とあったけれど、この少女から女への化けて行けるってのがすごすぎる。立場が完全に逆転してしまうんだよな。《まどろみながら、少女は恋をする――》少女が男に恋をしたとはボクは捉えにくかったんだけれど、とにかく恋した女の強さっていうのか。「緑の光線」のくだりもいいなぁ。ロメールの『緑の光線』とは全く逆に「見ると目が見えなく」なってしまって、ここで男と女の立場が完全に逆転してしまう。ついには、少女が「好きなものはないの?」と男に尋ねるくだり、檻の中の虎が行ったり来たりして、女の怖さを思い知らされる。そして、そして、女の口から発せられるのは・・・・・、これは下のボタンにしてしまいました。

 サラ・ムーンの写真が好きだったら、いきなりはまってしまうだろうなぁ。だって、あの青みがかったセピアだもん。そしてこれだけサラ・ムーンの色を撒き散らされたらもうサラ・ムーンの世界にどっぷり。最初とラストの妙な符合(メリーゴーランド)なんて、それはきっちり計算されたものだとわかっていてもずぶずぶ。
 ビヴァルディーがもう耳をついてはなれない。ミシシッピ・フォー、ミシシッピ・スリー、ミシシッピ・トゥー、ミシシッピ・ワン、ミシシッピ・ゼロ・・・・・
 

MISSISSIPPI ONE
監督 サラ・ムーン
製作 フィリップ・デュサール
脚本 ベニタ・ジョルダン / サラ・ムーン
撮影 エチエンヌ・ベッケル
音楽 デヴィッド・ロウ
出演 アレクサンドラ・カピュアノ / デヴィッド・ロウ

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2004年01月04日(日)
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