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 ルキノ・ヴィスコンティ『地獄に堕ちた勇者ども』 (1969 スイス, 伊) ★★★★

 ボクなぁ、こういう人間が入り乱れる話ってのはむちゃ弱い。人間関係を把握するのに死にそうになる。最初に鉄鋼王エッセンベックの誕生会で一族が終結し、ここであらかたの関係が示されるわけだが、これだけで血縁関係がわかる人、尊敬するよ。それも映画館でパッと見ただけでわかるなんて。一通り見終わって、あれこれ見直してみてそれでもいまいちようわからんところがある。それとこの話にはさらに、ナチの台頭をめぐるドイツの社会情勢がからんでくるともうお手上げ。これが前半1/3を占めるのだからたまったもんじゃない。いちおう関係図を作ってみました。間違ってたら教えて。
 鉄鋼王の跡目争い、というのはわかる。が、直系にはソフィしかいない。一代飛ばしてマーチン。が、副社長に指名されたのはコンスタンチン。そこでヘルベルトが席を蹴って立った。ここには突撃隊と旧ドイツ派の確執があった。なんて、読めるかぁぁぁ! いや、それだけちゃうよぉ、とにかく自分で関係図を作ってみて、ははん、あそこはそういうことだったのかとわかってきたことだらけ。


 さて、もうひとつ、まんまと騙されたというべきか、ダーク・ボガードがタイトルロールで最初に出てくるでしょ。これって単純にダーク・ボガードつまりフリードリッヒを軸に見てしまうんだよ。その割にはなんか冴えない役回り。それに反して、ヘルムート・バーガー=マーチンに照明があたりまくり。だいたい二人の登場の仕方からして月とスッポン。片や、雨の車の中での会社がどうたらこうたらなんてくっだらない話で出てくるのに、もう一方はスポットライトに照らされたデイトリッヒだもん。そこで気がつけよ<自分。
 ずばり軸はマーチンとソフィ(イングリッド・チューリン)であります。ダーク・ボガードなんて狂言回し。それと切り札がアッシェンバッハ(ヘルムート・グリーム)、こいつ美味しいとこ全部かっさらって行く。他のものはすべて滅びに傾いていくというのに。そりゃそうだ、ナチスを体現してんだから。

 ふーっ、ということであとは何がどうなるかは自分で確かめてくれ。そんなことより、話半分ほどしかわからない状態でありながら、前半の猛烈な眠気、実際シャーロット・ランプリングもただ員数的に出てるってだけでらしくなくて、ヘルムート・バーガーのシーンだけよ、耐えれるのは。そんなのを一気に吹き飛ばしてしまうのが、後半の加速度的に進む滅びの道。これがなかったら、こんなにこの映画が絶賛されるわけがない。「血の粛清」の凄惨、壮絶さといったら、ヴィスコンティ渾身のシーン。
 そして、後半になって、ぐんぐん輝きを増してくるのがソフィ。ただしそれも滅びの輝き。ソフィ、そしてマルチン。ラストにすべり墜ちていく流れもあまりに見事ならば、そのラストは、ヴィスコンティの美学以外のなにものでもない。三島由紀夫が絶賛するのは当然。これ、69年か。やられたぁと思ったんだろうな。

La Caduta degli dei (The Damned)
製作 アルフレッド・レビ
監督 ルキノ・ヴィスコンティ
脚本 ルキノ・ヴィスコンティ / ニコラ・バダルッコ / エンリコ・メディオーリ
撮影 アルマンド・ナンヌッツィ / パスカリーノ・デ・サンティス
音楽 モーリス・ジャール
衣装 ピエロ・トージ
出演 ダーク・ボガード / イングリッド・チューリン / ヘルムート・バーガー / シャーロット・ランプリング / ウンベルト・オルシーニ / ルネ・コルデホフ /ヘルムート・グリーム / ルノー・ヴェルレー / フロリンダ・ボルカン / アルブレヒト・シェーンハルス

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2004年01月09日(金)
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