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 クシシュトフ・キェシロフスキー『デカローグ4 ― ある父と娘に関する物語』 (1988 ポーランド) ★★★★★




 第4話『ある父と娘に関する物語 ― あなたの父と母を敬え』
 出生の秘密、というのはドラマによくあるネタなんだけど。。。
 娘アンカ(アドリアンナ・ビェドジェィンスカ)は父ミハウ(ヤヌーシュ・ガイヨス)とふたり暮し。アンカの母親はアンカが生れた直後に死んでしまっている。アンカがお年頃になって、ボーイフレンドと「生理あったぁ〜」などと電話しているのを聞いて落ち着かない。その一方で「復活祭の月曜日!」と水のかけっこするくらい仲がよろしい。
《この日は、聖水がいろいろなものにかけられるのだが、誰にでも("smigus-dyngus"と言いながら)水をかけてもいい習慣になっていているため、男性が好きな女性にかけたり、子供同士がふざけて通行人にかけたりする光景があちこちで見られる。》― ポーランド情報館より

 アンカはある日、父ミハウの手で《死後開封のこと》と書かれた封筒を見つけてしまった。そしてついに父が出張中にその封筒の封を切ってしまう。すると、中にもうひとつ《愛しいアンカへ》と書かれた母親からアンカあての手紙が封をされて入っていた。父が生きている間にアンカに打ち明けられない秘密とは。。。。
 封を切ってその秘密を知ってしまったアンカが出張から帰ってきたばかりの父親に打ち明けるシーンは圧巻。今まで実の父親だったはずのミハウは本当の父親ではなかった。どこか他所に父親がいる。これって第2話の続きのような。。。実際は違うけど。それに、第2話に出てきた医者(アレクサンデル・バルディーニ)と、この父娘が同じエレベーターに乗り合わせるのだから続きだなんて考えることの方が無理。それにしても、第7話も本当の親と子の関係に触れた話だったし、親子関係というのがキェシロフスキのひとつのテーマですね。
 さて、そのあとのアンカとミハウの関係が、またすごい。はじめに書いたように、この父と娘は非常に仲が良い。父と娘の関係を越えて、決して近親相姦ってわけではないけれど、お互いに男と女としての関係までも意識している。それがその秘密を知ったことで、父と娘の、それまで禁忌とされる制約が取り外されたことになる。二人で契りを結ぶ(決して男と女になって性交してしまうのじゃない)、そのシーンは、キェシロフスキの中でも最高のシーンじゃないかと思う。
 これ以上書くのはもう止めときますが、後半の展開は息苦しくなるくらいたまらないし、どんどん変わっていくアンカの顔つきがね、父ミハウの大人の顔も最高だね。

Dekalog
監督 クシシュトフ・キェシロフスキー
脚本 クシシュトフ・キェシロフスキー / クシシュトフ・ピエシェヴィッチ
撮影 クシシュトフ・パクルスキ
音楽 ズビグニエフ・プレイスネル
美術 ハリーナ・ドブロウォルスカ
出演 アドリアンナ・ビェドジェィンスカ / ヤヌーシュ・ガイヨス / アルテュル・バルシス

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2004年01月23日(金)
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