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 クシシュトフ・キェシロフスキー『デカローグ 6 ― ある愛に関する物語』 (1988 ポーランド) ★★★★☆



 第6話『デカローグ?:あなたは姦淫してはならない』
 これも少し前にまごれびゅにもアップした『愛に関する短いフィルム』のテレビ版。

 さてやっぱりこれでも、映画版とテレビ版を比較してしまいますが、ボクはこっちは映画版のほうが好き。『殺人〜』のほうはあまりにしつこくリアルに描かれるとへたれてしまうのだけれど、『愛〜』のほうはラブロマンスだよねぇ。そうしたらねっとりしっぽり描いてほしいわけです。ドライな人にとっては全く逆かもしれませんが。
 そしてラスト。。。。このテレビ版ではばっさり断切られてしまうんですね。キェシロフスキー自身はこの終わり方のほうが好きらしいけれど、思うにキェシロフスキって人は、何事に対してもかなりシビアな視点から見てしまう人のようです。

 ところで『デカローグ』ではどの話も、郊外の高層住宅が舞台になって、そこの住人の生活が描かれるのだけれど、よくもまぁこれだけ《事実は小説より奇なり》の人間模様があるもんだと。別の話のメインになった人物がエレベーターに乗り合わせてみたり、かなりの偶然性もある。ときにその偶然性がイヤミったらしくなったりもするのだが、ことキェシロフスキにおいてはその偶然性がむしろ心地よい。『ふたりのベロニカ』しかり、『トリコロール』しかり。
 『デカローグ』で特筆もんは、アルテュル・バルシス。『愛に関する短いフィルム』を見たときに、団地の下で旅行かばんを持った男とすれ違う、この男の意味がわからんかった。それだけじゃわかるわきゃないって(-.-;) かなり思わせぶりな人物なんだけれど、この人物がアルテュル・バルシス。このアルテュル・バルシスは第7話以外、すべてに瞬間的に登場する。キェシロフスキのお遊びといえばお遊びなんだけれど、なかなかどうして第4話なんかではかなりのキーパーソン的な働きを見せている。もちろん直接話にからんでくるわけではなくて、黒子のような存在でもあるのだが。このアルテュル・バルシスを追っかけてみるのも一興だよね。
 それから、河出書房新社『キェシロフスキーの世界』からのネタだけれど、この『裏窓』のような向かい合った団地で、マグダ(グラジナ・シャポロフスカ)の部屋は郊外の周囲に何もない場所にセットが組まれて、超望遠レンズで撮影されたそうです。そのとき、キェシロフスキはマイクを通してグラジナに「もっと脚を開いて!」と叫んでいたとか

Dekalog 6
監督 クシシュトフ・キエシロフスキー
製作総指揮 リシャルト・フルコフスキ
脚本 クシシュトフ・キエシロフスキー / クシシュトフ・ピエシェヴィッチ
撮影 ヴィトルド・アダメク
音楽 ズビグニエフ・プレイスネル
出演 オルフ・ルバシェンク / グラジナ・シャポロフスカ / ステファニア・イバンスカ / アルテュル・バルシス

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2004年01月29日(木)
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