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 クシシュトフ・キェシロフスキー『デカローグ 10 ― ある希望に関する物語』 (1988 ポーランド) ★★★★



 第10話『あなたは隣人の家をむさぼってはならない』
 ふーっ、とうとう最後の第10話まで来た。だいたい、日本とは母数が違うので比較にはならないが、この『デカローグ』シリーズ、第1話が52%の視聴率で、この最終回には64%になったという。実に3人に2人が見てることになる。こんなヘビーなドラマにこのような高視聴率。考えようによってはポーランドという国はけったいな国である。
 そして最後の最後に来て、コメディーに転じて大団円なんですね。第8話で大学教授婆ちゃんに、ツェッペリンの切手を嬉しそうに見せていた爺ちゃんが亡くなった。(この第10話では全く姿を見せませんですが) その爺ちゃんの息子がイェジー(イェジー・シュトゥル)とアルトゥル(ズビグニェフ・ザマホフスキ)、この二人が対照的。兄貴のイェジーはごくごくふつーのサラリーマン、かたや弟のアルトゥルがロックボーカリスト、よくもまぁ、同じ種からこんなに違うように育つものだワってくらい。
 さて二人で親父の遺品を整理し始めたら、ろくったらなものがない。そのくせ一人暮らしのアパートは厳重な戸締まりが施されている。と、いうのはろくなものがないくせに、切手収集にかけては右に出るものがないってくらい。その集められた切手には保険までかかっている始末。ところがそんな価値などわかってようはずがなくて、イェジーは息子に、先のツェッペリンをおみやげに持って帰ってやってしまった。そしてそのツェッペリンは息子によってどっさりの古切手に換られてしまってた。
 鑑定士を呼んで、遺品の切手を鑑定してもらったところ、とんでもないほどの価値がある。それを全て売り払ってしまおうとする兄弟に、父親が集めたコレクションは大切にすべきだと諭されたところから、二人の生活は変わっていってしまう。
 ラストだから気楽に行ったのか、いくつかは平行して撮影されていたから、そうでもないように思えるのだが、この第10話は、悲喜劇とはいえ、どこかほんわかしていて、それまでのような沈欝な悲愴感はない。切手とひきかえの腎臓移植などというせっぱ詰まった状況があっても、なんとなく安心してられる。その分、もの足り無さを感じないわけでもないけれど、最後の最後まで、それまでの調子で引っ張られるとしんどかったという印象も否めない。これはこれでよかったのだ。

Dekalog 10
監督 クシシュトフ・キエシロフスキー
製作総指揮 リシャルト・フルコフスキ
脚本 クシシュトフ・キエシロフスキー / クシシュトフ・ピエシェヴィッチ
撮影 ヤツェック・ヴゥアヴト
音楽 ズビグニエフ・プレイスネル
出演 ズビグニェフ・ザマホフスキ / イェジー・シュトゥル / ヘンリク・ビスタ



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2004年02月05日(木)
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