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■ 中平康『砂の上の植物群』(1964 日) ★★★★★
1964年というと、ボクはまだ中学1年のことで...などというのは、既にまごぽん(読書日記)のほうにも書いたのだが、これはずっとずっと見たかった映画。当時の中学生にはとても扇情的だったのね。いま見ると、ビーチクどころかオッパイすらまともには写されてはない。ジャネットがスーパーボウルのハーフタイムショーでポロリとやっちゃうご時世から見ると、ほんとなんでもないんですけどね。話としては元々かなりエロチックで、妹の明子役の西尾美枝子なんて新人で、撮影にあたって非常に悩みまくって泣いたのどうのなんて話も、その当時どこかで読んだな。とにかくおっぱいすら見えなくても、当時としては一級のポルノですね。ちなみにこの映画の配給元は日活。ロマンポルノなんてのは70年になってからの話で、鈴木清順の『けんかえれじい』が1966年の日活です。 まごぽんから引用しておくと、 《その1ショット1ショットのボカシの効いた鮮烈さはたまらない。こう書くと、映画みたいに思えるけど、あくまで文章のほう。いったい吉行の文章表現ってのは映画以上に映画的だ》 『娼婦の部屋』だったかなぁ、ラストがもうむちゃくちゃ好きなんよね、「カチッと背後で金属音がした」とかで終わるの。 さてこの『砂の上の植物群』ですが、これはすごいよ。エロいの。そのものを見せられないという(当時の)制約は、これほどエロい表現ができるかってくらいエロい。いや、ほんとに原作そのものもエロいんだけどね、まごぽんに引用した原文(京子の乳房を力いっぱいに握ると乳汁が迸るシーン)なんて、もうたまらんでしょ。その部分はさすがに映画は原文のエロさに負けてるけど。この原文のエロさはそうそうあるもんじゃないから、これに勝てというのは超難問になる。この映画は原作に負けず劣らずにエロい。例えば、のっけの横浜マリンタワーのエレベーターガールの口の動きが超アップになってく。人間の体の一部、しかも当たり前に露出されている、体の一部の猥褻さよ。明子(西尾三枝子)、京子(稲野和子)も超アップに描き出されるのあった。姉妹が伊木(仲谷昇)の妄想で入れ替わるところなんか、もうすごいの。 これいまの時代に撮ってたらどうなんだろ。誰か頑張ってみてもよさそうなんだけど、意外と吉行原作の映画化があまりないのは、やっぱり《吉行の文章表現ってのは映画以上に映画的》だからか。ばかばかとセックス描写がはめ込まれるばかりで逆につまらなくなるかもしれない。むしろ、ハダカそのものを見せることのできないギリギリのところで撮られたからこそ、ここまで表現に挑戦できたのかと思える。 原作からはほとんどと言っていいほど逸脱していなくて、逆に原作でもキーとなるクレーの絵画が写しだされるのがすごく嬉しい。 あ、そうそう、ラスト近く、床屋の鏡に映る仲谷昇がひどく吉行淳之介そのものに似ていたな。
Dekalog 8 監督 中平康 脚本 池田一朗 / 中平康 / 加藤彰 原作 吉行淳之介 撮影 山崎善弘 音楽 黛敏郎 美術 大鶴泰弘 出演 仲谷昇 / 稲野和子 / 西尾三枝子 / 信欽三 / 小池朝雄 / 高橋昌也 / 島崎雪子
ひとつ前 クシシュトフ・キェシロフスキー『デカローグ 10 ― ある希望に関する物語』 (1988 ポーランド) ★★★★
2004年02月07日(土)
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